研究課題/領域番号 |
18H00733
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研究機関 | 帝京大学 |
研究代表者 |
植月 学 帝京大学, 付置研究所, 准教授 (00308149)
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研究分担者 |
丸山 真史 東海大学, 海洋学部, 准教授 (00566961)
菊地 大樹 総合研究大学院大学, 先導科学研究科, 特別研究員 (00612433)
武井 紀子 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (30736905)
庄田 慎矢 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, 企画調整部, 室長 (50566940)
覚張 隆史 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 助教 (70749530)
諫早 直人 京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
平野 修 帝京大学, 付置研究所, 講師 (90620865)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 牛馬 / 動物考古学 / 畜産 / 同位体分析 / 脂質分析 |
研究実績の概要 |
新型コロナウィルス感染症による資料調査の制約のため、すでに借用している動物遺体群や採取済みサンプルの分析、発掘調査報告書など文献によるデータベースの拡充に重点を置いて研究を実施した。 動物遺体群の分析は遺存良好な中世の牛馬遺体を多数出土した青森県大光寺新城跡と鎌倉市由比ガ浜中世集団墓地遺跡の分析とデータ化をさらに進めた。サンプル分析は青森県林ノ前遺跡出土ウシ(古代)、千葉県市川市国府台遺跡・国分寺遺跡出土ウマ(古代)、韓国慶州出土ウマ(三国および統一新羅)について炭素・酸素安定同位体分析を実施した。脂質分析では山梨県百々遺跡出土土器の残存脂質分析結果解釈のためのレファレンスとして、由比ガ浜中世集団墓地遺跡の牛馬遺体より試料を採取し、分析を開始した。また、皮革加工具と想定されている古代の石器についても新たに残存脂質分析に着手した。データベースについては岩手県、宮城県内遺跡出土牛馬遺体に新たに着手したほか、引き続き西日本の牛馬遺体、東北の古代史料についても集成を進めた。 今年度の主な成果として、同位体分析例の少ない韓国出土ウマについて食性や移動に関する新たな知見が得られた。また、国内のウシについても同一個体内の臼歯連続サンプリングによる同位体分析を実施し、詳細な食性、移動履歴の検討に着手した。脂質分析については古代の土器に続いて石器でも残存脂質の検出に成功し、古代の牛馬利用解明の新たな手法を開拓しつつある。中世の由比ガ浜中世集団墓地遺跡では軽微な解体痕の存在が多数確認された。前年度に報告した青森県林ノ前遺跡例とも類似し、皮革や腱利用との関連が想定された。 前年度の古墳時代馬を主題とした『馬の考古学』(雄山閣)の刊行に続き、今年度は古代馬をテーマとする『馬と古代社会』(八木書店)が企画され、本研究グループからも代表者と2名の分担者が執筆に加わり、成果の発信にも努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウィルスの影響により、予定していた調査はほぼ不可能となり、借用済みの資料の調査、データベース拡充に重点を移すなどの措置をとった。しかし、出土遺体の調査が遅れているウシや、東北地方南部については必要な資料調査が十分に行えない状況が続いている。
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今後の研究の推進方策 |
ウシ遺体全般や古墳時代のウマ、朝鮮半島や東北地方南部など、調査不十分な時代、地域が残されているが、現地調査の見通しが立たないのが現状である。次年度は最終年度でもあり、現在得られているデータに立脚して、テーマを絞り込んだ上で地域・時代間の比較と、異分野間での相互討論を進め、報告書作成と論文執筆を進める。主要なテーマとしては以下を予定している。 1.牛馬比の地域差と時代差 データベースを活用し、特に東日本における牛馬比の変遷とその背景を明らかにする。 2.牛馬の一生(産地、移動、食性、用途、死亡) 同位体分析からみた産地と移動、食性や、古病理学的研究による馬の用途、文献史料による牛馬の用途、動物考古学による死亡年齢構成から牛馬の一生を復元するとともに、その地域と時期差を解明する。 3.斃牛馬の利用(皮革、肉、骨など) 牛馬遺体の出土状況、部位組成や解体痕、文献史料にみえる死後の利用と、脂質分析から推定される加工方法(土器、石器)を組み合わせ、より多角的に斃牛馬利用の実態とその地域・時期差にアプローチする。
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