• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 課題ページに戻る

2019 年度 実績報告書

聖地・霊場の成立についての分野横断的比較研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H00741
研究機関京都府立大学

研究代表者

菱田 哲郎  京都府立大学, 文学部, 教授 (20183577)

研究分担者 山岸 常人  京都府立大学, 文学部, 研究員 (00142018)
吉川 真司  京都大学, 文学研究科, 教授 (00212308)
東 昇  京都府立大学, 文学部, 准教授 (00416562)
向井 佑介  京都大学, 人文科学研究所, 准教授 (50452298)
岸 泰子  京都府立大学, 文学部, 准教授 (60378817)
上杉 和央  京都府立大学, 文学部, 准教授 (70379030)
井上 直樹  京都府立大学, 文学部, 准教授 (80381929)
諫早 直人  京都府立大学, 文学部, 准教授 (80599423)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード弥美神社 / 興道寺廃寺 / 湧水 / 播磨犬寺 / 三嶋神社 / 仏国寺 / 日韓比較
研究実績の概要

計画に列記した3つの課題について実績を述べる。
①神社に代表される聖地の立地特性と景観上の特徴に対する検討では、北陸道諸国の式内社の情報を集め、その立地についての検討をおこなった。とくに福井県美浜町の弥美神社について、考古学、文献史学、建築史学の各分野を横断して実地検討をおこない、社殿の脇に湧水があり、また中世には寺院の坊が連なる状況も把握でき、湧水を起点とする神社が発展する姿が明らかとなった。
②山林寺院などの霊場についての立地特性と景観上の特徴に対する検討では、①で扱った弥美神社の神宮寺があり、その近くの古代寺院である興道寺廃寺と周辺の寺院、高善庵遺跡も対象とした。この遺跡は興道寺廃寺に続く寺院とみられるが、平地の寺院が丘陵上に遷移していく典型例とすることができ、井戸をもつことも特徴として把握できた。さらに、昨年度より調査を実施している兵庫県神河町の「播磨犬寺」についても継続しておこない、その成果をまとめて年度末に報告書を作成した。同時に、類例を同じ播磨国内で探し、平地寺院が起点となり山寺が成立する過程を浮かび上がらせることができた。
③聖地・霊場の立地特性に対する比較研究では、昨年度の補足として、キリシタンの霊地である大阪府茨木市の竜王山の周辺に点在する聖地霊場の踏査をおこなった。国内での比較材料として取り上げた京都市東山区の三嶋神社については、その研究成果を報告する研究会を実施し、その成果を報告書にまとめることができた。大内氏の妙見信仰や秀吉期の都市改造などを経て、聖地が変遷し再生していく状況を明らかにすることができた。
東アジアでの比較では、中国の霊場についても集成を継続するとともに、朝鮮半島についての検討を開始した。朝鮮半島での事例を検討するため、慶州の仏国寺や石窟庵などを巡見し、いずれも水を得ることが立地上の重要な位置を占めており、日韓比較の可能性を確認した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

予定した巡見について、若狭の美浜地域を取り上げ、地域の研究者との意見交換も十分におこないながら実施することができ、またそれぞれの研究分担者が複数回調査に訪れるなど、内容の濃い調査をおこなうことができた。海外の巡見では、予定通り韓国を対象として実施し、異なる分野の研究者が同時に観察し、検討をおこなうことを通して大きな成果を得ることができた。また、韓国においても地元の研究者と交流し、とくに泉の重要性をについて共感できたことが大きな成果である。この他の研究についてもおおむね計画通りに進行してしており、着実に成果も得られていると考える。

今後の研究の推進方策

これまでの調査成果から、聖地霊場について異なる分野の研究者が同時に検討をおこなうことが大きな成果を上げることが明らかとなった。これをさらに継続していくことが重要であると考えている。地域としては山陰道の出雲石見地域や山陽道の備後安芸地域を対象とし、さらに検討を深めていけるようにしたい。また時代を異にする国内、国外の聖地についても泉などの共通項をもとに比較研究の可能性が広がってきている。普遍化していくにはさらに事例の蓄積が必要であるが、視点を共有しながら検討を進めることができる研究者を増やし、学際的な協業をおこなうことへ進むことが重要であると考えている。こうした観点で、中韓の研究者とも積極的に交流していきたい。

  • 研究成果

    (25件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件) 図書 (7件)

  • [雑誌論文] 大型横穴式石室と交通2020

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎
    • 雑誌名

      横穴式石室の研究

      巻: なし ページ: 431-443

  • [雑誌論文] 古代交野郡再考2020

    • 著者名/発表者名
      吉川真司
    • 雑誌名

      枚方市史年報

      巻: 22 ページ: 1-18

  • [雑誌論文] 史料編 棟札等釈文2020

    • 著者名/発表者名
      山岸常人・黒田龍二・登谷伸宏・岸泰子
    • 雑誌名

      丹波市の歴史的建造物

      巻: 3 ページ: 6-67

  • [雑誌論文] 水を得るための挑戦2020

    • 著者名/発表者名
      上杉和央
    • 雑誌名

      「間」からみる瀬戸内 瀬戸内のための素描

      巻: なし ページ: 162-164

  • [雑誌論文] 5世紀後半の百済の王権構造―王号・侯号・太守号と将軍号2020

    • 著者名/発表者名
      井上直樹
    • 雑誌名

      国立歴史民俗博物館研究叢書

      巻: 7 ページ: 29-54

    • 査読あり
  • [雑誌論文] 文化遺産周遊ルートをつくる―興道寺廃寺跡の活用へ向けて―2020

    • 著者名/発表者名
      諫早直人・土井悠起
    • 雑誌名

      京都府立大学文学部歴史学科フィールド調査集報

      巻: 6 ページ: 111-116

  • [雑誌論文] 考古学からみた6,7世紀の王権と地域社会2019

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎
    • 雑誌名

      季刊考古学

      巻: 別冊30 ページ: 102-109

  • [雑誌論文] 由義寺と由義宮2019

    • 著者名/発表者名
      吉川真司
    • 雑誌名

      八尾市史文化財紀要

      巻: 18 ページ: 27-63

  • [雑誌論文] 北魏興安二年舎利石函の図像学2019

    • 著者名/発表者名
      向井佑介
    • 雑誌名

      東方学報

      巻: 94 ページ: 89-112

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 中国の瓦窯―土器生産との関係を中心に―2020

    • 著者名/発表者名
      向井佑介
    • 学会等名
      窯跡研究会国際シンポジウム「土器窯と瓦窯の接点」
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 聖水・浄水と古代の山林寺院2019

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎
    • 学会等名
      国立慶州博物館新羅学国際シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] 飛鳥時代の墓制と国際関係2019

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎
    • 学会等名
      国際シンポジウム「日本と東アジア―歴史の発展と文化の交流― 」
    • 国際学会
  • [学会発表] 明石の古代2019

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎
    • 学会等名
      令和元年度 特別展『発掘された明石の至宝』 講演会
    • 招待講演
  • [学会発表] 行基菩薩の考古学2019

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎
    • 学会等名
      第17回ザ・グレートブッダ・シンポジウム
    • 招待講演
  • [学会発表] 平城京東山の宗教的環境2019

    • 著者名/発表者名
      吉川真司
    • 学会等名
      国立慶州博物館新羅学国際シンポジウム
    • 国際学会
  • [学会発表] 古代寺院の楽舞と琴歌2019

    • 著者名/発表者名
      吉川真司
    • 学会等名
      国際シンポジウム「日本と東アジア―歴史の発展と文化の交流― 」
    • 国際学会
  • [学会発表] 地域の文化財としての景観2019

    • 著者名/発表者名
      上杉和央
    • 学会等名
      シンポジウム「これからの地域の文化財の保存・活用」
  • [学会発表] 5世紀後半の百済の王権構造―王号・侯号・太守号と将軍号2019

    • 著者名/発表者名
      井上直樹
    • 学会等名
      近世史フォーラム2019年6月例会
  • [図書] 堂屋敷廃寺発掘調査報告書Ⅰ2020

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎・諫早直人ほか
    • 総ページ数
      80
    • 出版者
      神河町教育院会
  • [図書] 堂屋敷廃寺発掘調査報告書Ⅱ2020

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎・諫早直人ほか
    • 総ページ数
      58
    • 出版者
      神河町教育委員会
  • [図書] 日本建築の歴史的評価とその保存2020

    • 著者名/発表者名
      山岸常人
    • 総ページ数
      672
    • 出版者
      勉誠出版
    • ISBN
      9784585222682
  • [図書] 中国初期仏塔の研究2020

    • 著者名/発表者名
      向井 佑介
    • 総ページ数
      316
    • 出版者
      臨川書店
    • ISBN
      9784653044390
  • [図書] 古代寺院史の研究2019

    • 著者名/発表者名
      菱田哲郎、吉川真司ほか
    • 総ページ数
      512
    • 出版者
      思文閣出版
    • ISBN
      9784784219681
  • [図書] 古代寺院2019

    • 著者名/発表者名
      吉村武彦・吉川真司・川尻秋生・菱田哲郎・海野聡・藤岡穣・ブライアン・ロゥ
    • 総ページ数
      364
    • 出版者
      岩波書店
    • ISBN
      9784000284974
  • [図書] 京都東山・三嶋神社文書調査報告2019

    • 著者名/発表者名
      東昇・水谷友紀
    • 総ページ数
      164
    • 出版者
      京都府立大学文学部歴史学科

URL: 

公開日: 2021-01-27  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi