研究課題/領域番号 |
18H00748
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研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
右代 啓視 北海道博物館, 研究部, 研究部長 (30213416)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 北方文化 / 先史文化 / 物質文化 / アイヌ文化 / 続縄文文化 / 江戸後期の墓 |
研究実績の概要 |
2018年の研究成果は、国後島中部太平洋側古釜布砂丘で続縄文文化の遺跡1カ所(調査期間:7/20~7/23)、択捉島中部オホーツク海側の紗那地域で続縄文文化の遺跡2カ所、別飛地域でアイヌ文化のチャシ1カ所を新たに重要な発見をした(調査期間:9/14~9/17)。調査メンバーは、研究協力者、政府同行者などを含め6名で実施した。択捉島の研究協力者などの研究会では、在住のロシア人が振別で発見した、現存する江戸後期の墓の貴重な情報を収集し、今後の調査対象であることを確認した。研究成果の共有は、択捉島の先史文化探検隊の活動報告や国後島古釜布郷土博物館で郷土史クラブとのワークショップの開催など、現地ロシア人との学術的な交流で成果の普及につとめた。 考古資料・遺跡情報調査は、徳島県立鳥居龍蔵記念館でフィールド・ノート等のデータを収集し、元四島民から東京、函館、釧路、根室などで歴史・文化にかかわる情報を収集した。さらに、研究成果の公開では、釧路市(11/17、参加者:50名)と根室市(12/8、参加者:94名)でシンポジウム「北方四島の過去と現在・未来に何を伝えるか-歴史文化遺産を伝える-」を開催し、今年度の国後、択捉での現地調査やこれまでの研究成果を含め、人類活動史から北方四島の歴史・文化遺産の継承を考える機会とし、成果をあげた。北海道をはじめ、釧路市、根室市、釧路市立博物館、根室市歴史と自然の資料館、北方四島関係機関と共同で開催し社会貢献を果たした。 今年度の北方四島調査は、日ロ間で北方領土返還の交渉や共同経済交流などが話合われたこともあり、専門家の現地調査については、制限が厳しくなり希望する地域の立入りが厳しかったが概ね成果をあげることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画の進捗状況は、フィールド調査、関連資料調査、北方四島元島民の聞取り調査など、順調に進んでいる。しかし、北方四島のフィールド調査では、さまざまな調査地域の立入の制限がかかり、限られた地域の調査にとどまった。研究成果の公表については、公開シンポジウムの開催(根室・釧路2回)と地域の連携し、成果をあげた。この成果の刊行について次年度計画することとしている。研究協力者との会議は、フィールド調査、シンポジウム開催に合わせて4回開催し、研究計画の推進に協力をえた。研究成果の刊行物、学会等の発表は、刊行物が2件(下記の文献)、北海道博物館のニュースレターで1件、学会では2回、招待講演では2回を実施している。したがって、本研究は、概ね良好に進捗している。また、北方四島のフィールド調査終了後、記者会見を開き調査の成果を広く公表した。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の研究計画の推進方策は、北方四島での長期滞在、調査地域の自由化の実現が大きな課題である。北方四島のフィールド調査は、外務省欧州ロシア課、内閣府北方対策本部と連携をはかり、これまでもビザなし交流の専門家として現地調査を実施している。しかしながら、北方四島でのフィールド調査は、日ロ間の外交ルートをつうじ、日ロ北方四島代表者会議で調整し実施しているが、現地研究協力者の協力とは別にロシア側の規制を多く受けることが多い。今年度は、概ねフィールド調査を実施したが、これらの課題を次年度以降、研究協力者や関係機関と連携・調整を強化し、現地調査実施に向けた推進をはかる。また、研究協力者との会議、さらにシンポジウム開催し、研究成果の一般公開を市町村と連携し推進する。さらに、元島民からの歴史・文化にかかわる情報収集は、皆高齢でありできるだけ多くの方の情報を収集することに重点をおき進めたい。また、学会等での研究成果公表は、積極的に進める。
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