研究課題/領域番号 |
18H00748
|
研究機関 | 北海道博物館 |
研究代表者 |
右代 啓視 北海道博物館, 研究部, 研究部長 (30213416)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
|
キーワード | 北方文化 / 先史文化 / 江戸・明治・大正 / アイヌ文化 / オホーツク文化 / 擦文文化 / 続縄文文化 / 縄文文化 |
研究実績の概要 |
2019年の研究成果は、国後島中部オホーツク海側のヤンベツ海側のヤンベツ湖周辺、小田富周辺の2地域と択捉島中部オホーツク海側の老門1地域で現地調査を実施した。ヤンベツ湖周辺の地域では、4カ所の遺跡(続縄文~オホーツク文化期)とヤンベツ漁場の番屋跡(明治中期~昭和初期)1カ所を発見した。小田富周辺の地域では、オホーツク海に接する北側に位置する海岸段丘上で9カ所(縄文文化~アイヌ文化期)の遺跡を発見した。この内5カ所がアイヌ文化のチャシ跡であった。調査メンバーは、研究協力者、政府同行者などを含め6名と、現地協力者の5名で実施した。老門の地域では、ビザなし交流の墓参同行し、1カ所の遺跡(続縄文文化~擦文文化)を発見することができた。 考古資料・遺跡情報調査は、東京国立博物館所蔵の北方四島資料のデータを写真撮影、情報収集を実施した。東京、函館などに在住する元四島民からは、北方四島の歴史・文化にかかわる情報を収集した。2月に計画したサハリン州立郷土博物館の海外調査は、コロナウィルス対応のため中止した。 研究成果の公開では、シンポジウム「北方四島専門家交流の成果とその役割と課題」を開催し、北方四島専門家グループである歴史・文化系、動植物・生態系、地震・火山系の三つのグループの研究成果公開と北方四島専門家交流の役割と課題について議論し、今後の専門家交流の重要性を総括し大きな成果をあげた。参加者は約100名で、高い関心をもたれていた。このシンポジウムは、北海道をはじめ、根室市、根室市歴史と自然の資料館、北方四島関係機関の協力をえて開催し、北方四島交流の進展や地域への社会貢献を進めた。 年々、北方四島調査は、制限が厳しくなり当初計画していた択捉島のフィールド調査を中止したが、概ね成果をあげることができた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究計画の進捗状況は、フィールド調査、関連資料調査、北方四島元島民の聞取り調査など、順調に進んでいる。しかし、北方四島のフィールド調査では、国後島フィールド調査で大きな成果をあげたが、調査地域の立入の制限のため択捉島のフィールド調査を中止なった。また、「北方四島ビザなし交流」の択捉島墓参団に同行し、元島民からの情報や遺跡の発見などの成果をあげた。 研究成果の公表については、公開シンポジウムの開催(根室市:1回)と地域の連携深め成果をあげた。研究協力者との会議は、フィールド調査、シンポジウム開催などを合わせて5回開催し、研究計画の推進に協力を得ている。研究成果の刊行物、学会等の発表は、刊行物が4件(下記の文献)、学会では国内1回、海外1回の研究発表を行った。 したがって、本研究は、概ね良好に進捗している。また、北方四島のフィールド調査終了後、記者会見を開き調査の成果を広く公表し、各新聞社、マスコミなどで取上げられた。
|
今後の研究の推進方策 |
研究計画の推進方策は、北方四島での長期滞在、調査地域の自由化の実現が、これまでと同様に大きな課題である。北方四島のフィールド調査は、外務省欧州ロシア課、内閣府北方対策本部と連携をはかり、ビザなし交流の専門家として現地調査を実施することとなっている。しかしながら、我々の北方四島でのフィールド調査は、日ロ間の外交ルートをつうじ、日ロ間北方四島代表者協議で調整され実施が決定される。2020年度の日ロ間北方四島代表者協議は、2020年3月14日に開催を予定していたが、コロナウィルス対応のため中止となり紙上協議となっている。の四島訪問については、継続協議となっており外交ルートをつうじた協議となっている。また、2020年の四島交流は、コロナウィルス対応の観点から2020年7月以降の実施となっているのも現状で、今後の調査日程については不明確となっている。現地研究協力者との協力は十分にとれているが、ロシア側の規制、コロナウィルス対応などの影響が懸念されているのが現状である。 2019年度は、概ねフィールド調査を実施したが、これらの課題を次年度以降、研究協力者や関係機関と連携・調整を強化し、現地調査実施に向けた推進をはかる計画でいる。また、研究協力者との会議、さらにシンポジウム開催し、研究成果の一般公開を市町村と連携し推進する。さらに、元島民からは、歴史・文化にかかわる情報を収集し、高齢でもあり多くの方々から情報の収集することに重点をおき進めたいと考えている。また、学会等での研究成果公表は、積極的に進めることとする。
|