研究課題
狩猟採集文化と農耕文化の接触を示す具体的事例を明らかにするため、北海道伊達市有珠モシリ遺跡の過去の出土遺物および人骨を再検討した。考古班は、次年度に行う発掘調査に必要な遺跡全体の地形測量と水準点の設置を行なった。また、旧調査により出土した動物遺存体を再整理した結果、大型のヒラメ、カレイ類やラッコといった北海道近海の海洋資源の利用とともに、飼育されたブタの存在が確認された。また、改葬墓の存在とも関連し、人骨片が多数存在することも確認できた。人類班は過去に出土した人骨を対象に各分野で分析を進めた。古病理では、有珠モシリ遺跡出土の縄文・続縄文期のエナメル質減形成の出現状況についてデータを取り終えた。次年度以降は他の遺跡出土の人骨群との比較検討を進め、有珠モシリ集団の健康状態を解明する予定である。DNA分析では、北海道の各地から出土した縄文人骨のゲノム解析を進め、特に礼文島船泊遺跡出土人骨に関して全ゲノムの解析を終了した。今後、有珠モシリ遺跡出土人骨との比較が可能になる。残存デンプン粒分析では、有珠モシリ遺跡を含む北海道内の続縄文期の人歯(3遺跡16体)に付着した歯石(21サンプル)を採取し、顕微鏡により観察した結果、8サンプルから12粒のデンプン粒を検出した。今後は種の同定を行う予定である。環境班は、有珠地区における古環境復元のためのボーリングコアを2本採取(14.99mと7.10m)した。コアからはAMS年代測定(9点)、花粉(9点)、珪藻(5点)の各分析用試料を採取した。また、コアの観察の結果、有珠地区はおよそ数千年間で、内湾~干潟(湿地)~陸地へ変化したことが推定された。ただし、一部年代値が逆転していた箇所もあり、コア全体の時系列的な概要の把握ができていないため、今後は追加で年代測定と火山灰分析を行い、貝類の同定結果などと合わせて、古環境復元を試みる。
2: おおむね順調に進展している
札幌医科大学が約30年前に調査した際の出土遺物を再整理し、現代的な観点から各種分析を行った。作業は当初予定していた通りに遂行できており、成果も上がっているため順調といえる。
次年度は有珠モシリ遺跡の旧調査区の再発掘を行い、掘り残した墓坑の調査と貝層断面の再実測とブロックサンプルの採取を通して、遺跡の内容を明らかにする。また、遺跡全体の分布調査を行い、約10,000㎡の小さな島の利用状況を把握する。さらに、出土遺物や人骨を用いた各種分析を実施する。また、環境班では有珠小学校付近の旧湖沼部分のボーリングコアを分析し、一部追加測定も行いつつ環境復元を試みる。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件)
旧石器時代文化から縄文時代文化の潮流
巻: 1 ページ: 461-470
Bulletin of the National Museum of Nature and Science Series D Anthropology
巻: 44 ページ: 1-8
季刊考古学
巻: 143 ページ: 49-52
巻: 146 ページ: 87-88
巻: 143 ページ: 43-46
考古学ジャーナル
巻: 714 ページ: 10-14
巻: 144 ページ: 30-33
北海道考古学
巻: 54 ページ: 21-34
PLoS ONE
巻: 13-6 ページ: e0198689