研究課題/領域番号 |
18H00752
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研究機関 | 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所 |
研究代表者 |
松村 恵司 独立行政法人国立文化財機構奈良文化財研究所, その他部局等, 所長 (20113433)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 出土銭貨 / 考古学 / 貨幣史 / 経済史 / 和同開珎 / 貨幣経済 |
研究実績の概要 |
昨年度に引き続き本年度も奈良文化財研究所が公開する古代地方官衙関係遺跡データベースと、古代寺院遺跡データベースを利用して、旧国単位に作成した国郡図に官衙関連遺跡と古代寺院跡の位置を落とした分布図を作成し、和同開珎出土遺跡と比較対照する検討作業を継続した。さらに、在地における有位者の存在を示す銅製帯金具の出土遺跡分布図の作成作業を、全国に広げ、旧国単位に作業を進めている。 平成31年3月に開催した研究集会『和同開珎の生産と流通をめぐる諸問題』の記録集の刊行に向けて、当日の研究発表のテープ起こしを行い、発表者に原稿の修正を依頼した。修正の終わった原稿のレイアウトをはじめとする編集作業を行い、令和2年3月に『和同開珎の生産と流通(二)』(A4版、175頁)を刊行した。 銭貨流通や交易に関わる出土木簡を集成した『日本古代貨幣関係木簡集成』の編集作業を進め、8項目765点の木簡釈文を入力し、項目別にレイアウトした。さらに個々の木簡の属性をまとめたデータ編も完成させ、主な木簡の解説文の執筆を進めた。刊行は令和2年度を予定。 集成した古代貨幣関係木簡の中に、「一千文+貫+人名」と記された木簡が12点存在することを確認。これを一千文貫木簡と命名し、その性格を考究した。その結果、木簡に記された年紀から、天平宝字から宝亀年間に稼働した田原鋳銭司が鋳造し、中央に進上した新銭に付した木簡と推断した。一貫文の緡銭(貫緡)に整えた責任者名を記すことで、その額を保証した木簡とみられる。 和同開珎銭笵の3D計測作業は、各地に分散する銭笵の基準資料となる山口県下関市立歴史博物館所蔵の長門鋳銭司出土銭笵(重文)の計測を行った。また、鋳銭司関係文献資料の収集作業として、鋳銭司関係文献目録を作成し、既往の研究論文の複写作業を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
平成30年度に開催した研究集会の研究成果報告書『和同開珎の生産と流通(二)』を刊行できたが、編集作業に手間取り、地方官衙関連遺跡の分布図の作成作業が計画よりもやや遅れ気味である。年度末の新型コロナウイルス感染症の流行も、銅製帯金具の全国出土分布図の作成作業の進捗に影響を及ぼしている。 本年度に刊行を目指した『日本古代貨幣関係木簡集成』は、編集作業をほぼ終えており、次年度に刊行を予定。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、官衙関連遺跡・寺院分布図の完成に全力を注ぎ、完成後に銅製帯金具の出土分布図の作成を全国規模で進める予定である。 その後に和同開珎出土遺跡分布図と官衙関連遺跡・寺院分布図、帯金具出土分布図を合体させ、古代の歴史的環境下で和同開珎出土遺跡の性格を考究し、銭貨を交換手段とする交易が駅路沿いに展開したとする仮説を補強したいと考える。研究の最終年度にあたる令和3年度には作成した分布図を印刷刊行する計画である。
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備考 |
研究発表「法隆寺伝世木簡と7世紀の貨幣」『第69回法隆寺夏季大学』2019年7月
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