本研究は、全国の和同開珎出土遺跡(784遺跡、出土総数6362点)の正確な分布図を古代の国単位に作成し、駅路、駅家、国府などとの位置関係から、和同開珎出土遺跡の性格を探り、古代銭貨の流通が都城と畿内周辺国に限られたとする従来の通説的理解の検証を試みた。その結果、和同開珎出土遺跡が駅路沿いに分布する傾向が明確になり、畿外における銭貨流通が駅路沿いに展開した可能性が高まった。 これは当時、社会問題化していた調庸運脚や役夫の帰郷時の飢苦を救済するために、彼らに銭貨を所持させ、旅の途次に食糧を購入できるシステムの整備を企図した律令国家の貨幣政策を反映した現象とみられる。
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