研究課題/領域番号 |
18H00755
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
覚張 隆史 金沢大学, 国際文化資源学研究センター, 助教 (70749530)
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研究分担者 |
植月 学 弘前大学, 人文社会科学部, 准教授 (00308149)
川嶋 舟 東京農業大学, 農学部, 准教授 (00401711)
丸山 真史 東海大学, 海洋学部, 講師 (00566961)
小嶋 芳孝 金沢学院大学, 文学部, 非常勤講師 (10410367)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 古代ゲノム / ウマ / 日本在来馬 / 遺跡出土馬 |
研究実績の概要 |
本年度は、日本列島の遺跡出土馬からのゲノムデータ取得を試み、良好なゲノムデータが取得可能な試料の探索を試みた。特に、中世の遺跡出土馬のデータ取得のために、神奈川県鎌倉市由比ヶ浜南遺跡出土馬2個体から試料を採取し、DNA抽出及び次世代シーケンサー(NGS)を用いたゲノムデータの取得を実施した。側頭骨からのDNA抽出液から得られたNGSデータを元に、ウマのリファレンスゲノム配列であるeqCab2を参照配列としてBWA_alnによるマッピングを行った。その結果、得られたDNA抽出液から得られたゲノムデータのうちで参照配列として識別されたリードデータの割合は約60%以上であった。取得したDNA分子が古い時代に生合成された分子であるか検証するために、mapDamage2による塩基配列の突然変異率を配列部位ごとに算出した。その結果、DNAの両末端に古代DNAに特有のC>Tの変異が検出された。 この様に高い内在DNA率を示したDNA溶液が得られたことから、さらにNGSデータを取得することで高精度な遺跡出土馬ゲノムデータを得られる道筋がついた。また、今回得られた低カバレッジの遺跡出土馬ゲノムデータ及び先行研究で公表されている現生馬及び古代馬ゲノムデータを用いて、他集団との遺伝的親和性を求めた。NGS解析ツールであるGATKのUnifiedGenotyperを用いて、先行研究で示されている一塩基多型部位(SNP)から遺跡出土馬のアレルデータを抽出し、リファレンスゲノムとマージした。マージしたデータからEigenstratフォーマットに変換し、遺跡出土馬とリファレンス集団間の遺伝的親和性をOutgroup f3 statisticsとして求めた。また、TreeMixによる各集団間の系統関係及び主要な混血の有無を検討した。今後、これらの結果を国際学会において発表した後に、論文化を進める予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
日本列島の遺跡出土馬骨からウマDNA含有率の高い保存状態が極めて良い試料の探索に成功した。これほど保存状態が良い古代DNA分子が得られたことから、日本列島における遺跡出土馬の高精度基準ゲノム配列が得られる道筋がついた。このデータが得られることによって、日本列島内の他の遺跡出土馬から得られる低カバレッジデータの解析精度が向上することが見込まれる。従来の予定ではここまでウマDNA含有率が高い試料が得られるとは考えていなかったために、他の遺跡出土馬からNGSデータを多めに取得することを想定していたが、今後は1個体当たりのNGSゲノムデータ取得を抑えつつ、より多個体のゲノムデータの取得に方針を転換することができる。よって、当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
今後の方針として、日本列島に限らず隣接地域である大陸部の沿海州地方、遼東半島、東南アジアにおける遺跡出土馬のゲノムデータ取得を目指し、各地域の研究者との共同研究の新規探索も視野に研究活動を進めていく予定である。また、すでに得られた日本列島遺跡出土馬のDNA溶液をNGSのハイスループット機種であるNova-seqかHiseqでランにかけ、高精度のゲノムデータを取得することを試みる。
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