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2019 年度 実績報告書

教育資源・観光資源としての地域文化遺産の活用と保存

研究課題

研究課題/領域番号 18H00760
研究機関国立民族学博物館

研究代表者

日高 真吾  国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 教授 (40270772)

研究分担者 園田 直子  国立民族学博物館, 人類基礎理論研究部, 教授 (50236155)
末森 薫  国立民族学博物館, 学術資源研究開発センター, 機関研究員 (90572511)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード保存科学 / 保存修復 / 文化財科学 / 博物館資料保存論 / 博物館教育論
研究実績の概要

2019年度は、まず2018年度に制作した村上市の奥三面パックと枚方市の鋳物パックの2つの教育パックの本格運用と改善点の洗い出しを実施した。なかでも奥三面パックについては、村上市の教育委員会が主催する校長会での教育パックの説明と夏休みの教員向け研修会において、教育パックの紹介をおこない、積極的に意見交換の場を設け、教育パックの改善点の洗い出しをおこなった。さらに、博物館に最も近い小川小学校を最初のフィールドとして教育パックを使用することを提案し、そこで出た意見をもとに奥三面パックの改修をおこなった。また、京都市左京区久多の山村のくらしをテーマとした教育パックの制作に着手し、ここでは、民泊体験で使用できるDVD番組の制作をおこなった。
地域文化遺産の活用については、枚方市内の学校所在の民具について保存状況を確認するとともに、より効果的な活用を目指した展示方法について枚方市教育委員会と意見交換をおこなった。また、旧月立中学校、旧茎太小学校の環境調査を実施し、よりよい保存環境と活用プランについて温度湿度の推移についてモニタリングをおこない、保管場所の運営について助言をおこなった。特に今年度は旧茎太小学校においてハツカネズミの生息が確認され、適切な対応ができ、被害を最小限に食い止められたことは大きな成果と考える。
これらの研究活動においても地元の教育委員会との連携を強く意識し、地域主体の運用体制の構築に努めることができた。また、上記内容について、日本民具学会、文化財保存修復学会、近畿民具学会等において研究発表をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当該研究課題の最大の成果には、これまで取り組んできた教育パック「地域文化の宝箱」の制作があげられる。現在、対象とした新潟県村上市、大阪府枚方市、京都市左京区久多の教育パックはほぼ完成し、来年度から本格運用のできる準備が整った。また、作業的にはやや遅れている気仙沼市の教育パックがあるがこちらも制作、運用の準備が整いつつある。この点においては本研究課題は順調に進捗していると評価できる。しかし、新型コロナウイルスの関係で現地での運用試験に取り掛かるめどがたたないことから、制作した教育パックの評価、あるいは気仙沼パックの最終的な設計・制作の見通しが立てられない状況であり、研究計画の変更を視野に入れる必要性を感じているところである。

今後の研究の推進方策

来年度は地域文化の宝箱の最後のテーマとなる気仙沼の魚食パックを完成させ、昨年度までに完成させた奥三面パック、枚方パック、久多パックの本格運用を開始し、運用における各パックの課題を明らかにすることを計画している。具体的には、制作した教育パックを協力機関の地域の学校で運用試験をおこなう。この運用試験では、実際に学校の授業において運用する。また、運用に当たっては、学校の教師及び博物館学芸員による授業をおこないながら、両者が使用できるようなパックの内容と運用マニュアルを策定する。さらに、観光施設における運用も試み、地域文化の観光拠点である博物館施設での利用の可能性について明らかにする。ここでの試験では、研究メンバー全員が関与し、各試験において反省と改善を繰り返す。このことによって、地域博物館をはじめとする施設に保管される民俗資料を地域文化遺産として位置づけ、それらの教育資源、観光資源としての可能性を引き出す。
また、上記内容について、日本民具学会、文化財保存修復学会等関連する学会で発表するとともに、各協力機関が所在する地域でも積極的に成果公開をおこなう。このことによって、学術的な議論を鍛え上げつつ、地域への研究成果の還元を達成する。加えて、博物館施設ではない学校などの施設を想定した学校所在の民俗資料の保存環境の創出のための方法論を明らかにする。
しかしながら、新型コロナウイルスの社会的影響が拡大する中、上記計画の中で気仙沼パックの完成を実現することは極めて厳しいと言わざるを得ない。その場合は、これまでのパック制作の中で要望として高かった着物体験パックの実現に向けた収納方法、活用方法について、適切な提言をするための研究計画の変更を考えたい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2020 2019 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 2件) 図書 (1件) 備考 (1件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [雑誌論文] 大阪府北部を震源とする地震で被災した国立民族学博物館の復旧活動2019

    • 著者名/発表者名
      日髙真吾
    • 雑誌名

      国立民族学博物館研究報告

      巻: 44-1 ページ: 53-127

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Mobile and Non-Chemical Pest Control Measures Applicable to Small-Size Museums2019

    • 著者名/発表者名
      Shingo Hidaka
    • 雑誌名

      Senri Ethnological Studies

      巻: 102 ページ: 69-84

    • 査読あり
  • [学会発表] 地域文化の宝箱の展望と課題2019

    • 著者名/発表者名
      日髙真吾
    • 学会等名
      日本民具学会
  • [学会発表] 博物館の事前学習のための教育キット-地域文化の宝箱2019

    • 著者名/発表者名
      日髙真吾
    • 学会等名
      国際フォーラム『地域文化を活用する-地域振興、地域活性に果たす役割』
    • 国際学会
  • [学会発表] 新潟県十日町市「根津家文書」の解読支援2019

    • 著者名/発表者名
      末森薫
    • 学会等名
      国際フォーラム『地域文化を活用する-地域振興、地域活性に果たす役割』
    • 国際学会
  • [学会発表] 大阪府北部を震源とする地震による国立民族学博物館の収蔵庫の被害と対応について2019

    • 著者名/発表者名
      園田直子、日髙真吾、末森 薫、河村友佳子、橋本沙知、西澤昌樹、小関万緒、石田糸絵
    • 学会等名
      文化財保存修復学会
  • [学会発表] 大阪府北部を震源とする地震による国立民族学博物館の展示場と図書室の被害と対応について2019

    • 著者名/発表者名
      日髙真吾、園田直子、末森 薫、河村友佳子、橋本沙知、西澤昌樹、小関万緒、石田糸絵
    • 学会等名
      文化財保存修復学会
  • [図書] 敦煌莫高窟と千仏図 規則性がつくる宗教空間2020

    • 著者名/発表者名
      末森薫
    • 総ページ数
      354
    • 出版者
      法蔵館
    • ISBN
      978-4-8318-7731-4
  • [備考] 教育資源・観光資源としての地域文化遺産の活用と保存

    • URL

      https://www.minpaku.ac.jp/research/activity/project/other/kaken/18H00760

  • [学会・シンポジウム開催] 国際フォーラム『地域文化を活用する-地域振興、地域活性に果たす役割』2019

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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