研究課題/領域番号 |
18H00763
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
村山 祐司 筑波大学, 生命環境系, 教授 (30182140)
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研究分担者 |
日下 博幸 筑波大学, 計算科学研究センター, 教授 (10371478)
山下 亜紀郎 筑波大学, 生命環境系, 助教 (60396794)
大場 真 国立研究開発法人国立環境研究所, 福島支部, 室長 (90462481)
森本 健弘 筑波大学, 生命環境系, 講師 (20282303)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ヒートアイランド / 発展途上国 / 都市構造 / 衛星画像 / GIS / リモートセンシング / 土地利用 / 将来予測 |
研究実績の概要 |
アジア及びアフリカの急成長都市群を対象に,衛星画像データから地表面温度,土地被覆・利用パターンを推定するとともに,社会経済的特性の分布の空間可視化を行った.都心から郊外に向かってどの程度の距離減衰効果が働くかは,複雑系科学によるパターン認識法を用いて把握した.分析結果を踏まえ,ヒートアイランド現象を空間的(中心-周辺)に捉えて,都市構造(単極,多極分散)との因果関係を探った.対象とした都市は,マニラ,上海,北京,カトマンズ,コロンボ,テヘラン,ラゴスなどである. ヒートアイランド現象の理論化については,アジアのメガシティの都市化に伴う気候変化をより高精度に計算するために多層キャノピーモデルを開発し,その精度検証を行った.具体的には,領域気候モデルを用いて,アジアのメガシティの都市化に伴う気候変化を推定した. また,ヒートアイランド現象の悪化がもたらす都市生態系の変化に関する分析を行った.文献レビューにより都市熱リスクの評価を行い,リスクと脆弱性の各要素について考えられる指標をリストした.さらに,フィリピンの都市を対象に衛星写真解析から地表面温度指標を推定するとともに,現地においてデータの入手可能性を確認し,専門家に対するヒアリングを実施した. 理論的研究を補強するため,クアラルンプールとシンガポールの都市中心部において,ヒートアイランド緩和効果のある水辺空間の整備状況とその活用・維持管理に関する現地調査を実施した. さらに本年度は,スリランカを重点的な研究対象地域に選び選定し,研究代表者と分担者2名がチームを組んで,都市化,土地被覆・土地利用の現地観察,専門家ヒアリング,データの入手可能性に関するインテンシブなフィールドワークを行った.コロンボ大都市圏およびキャンディ大都市圏で,土地利用の高度化及びそれに伴う都市環境の変化に関する現地調査を実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
予定通り作業が進み,着実に成果をあげている.
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今後の研究の推進方策 |
本研究では,熱画像のソースとしてLandSat衛星画像を利用している.しかし,雲や影の影響により精確な情報を得られないことがある.その場合には,対象年次を変更したり,場合によっては対象都市を変更するなどの措置を講じる. 都市ヒートアイランドの形成要因の分析では,市街地の水平的拡大と建物の垂直的拡大,さらにそれに伴う社会経済的な機能変化に注目する.ランドサットデータをもとに都市の土地利用を分類し,1985年以降に市街地(人工建造物)が空間的にどの程度増加したか,その一方で緑地がどの程度減少したかを定量的に捉えたい.アジアとアフリカでは,ヒートアイランドの発生要因やポテンシャル強度の差異が予想されるので,地理学的観点から両地域を比較考察して相違をもたらす原因を解明する. 発展途上国の諸都市におけるヒートアイランド形成のメカニズムは,欧米の都市がたどってきたプロセスとは成因が根本的に異なる.このため,発展途上の各都市が有する地理的特性に応じた独自の視点と分析枠組が必要になる.地理学的視点に立って実証分析を積み重ねるとともに,都市間比較を通して,有効な方法論や分析手法を確立することが求められる.さらに,ヒートアイランド現象の深化が社会にどんな影響を及ぼすのかを的確に予想し,今後の対策や政策に生かすことが重要である.
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