研究課題/領域番号 |
18H00767
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
丸山 浩明 立教大学, 文学部, 教授 (50219573)
|
研究分担者 |
北村 暁夫 日本女子大学, 文学部, 教授 (00186264)
ドナシメント アントニー 立教大学, ランゲージセンター, 教育講師 (30734991)
山本 充 専修大学, 文学部, 教授 (60230588)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | トランスナショナリズム / 移民 / ブラジル / パラナ州 / 非同化適応戦略 / カストロ / カストロランダ |
研究実績の概要 |
本年度は、パラナ州の代表的な移民集団であるドイツ系、イタリア系、オランダ系、日系、ウクライナ系、ポーランド系の主要な移住地を訪問して、それぞれの移民史や移住地の経済・社会・文化的特性に関する現地調査を行い、移民関係資料を収集した。とくにドイツ系に関しては、今回多数の移住地を訪問したことで、同州にはプロイセン、ロシア、オーストリア=ハンガリー帝国、ユーゴスラビアなどから、それぞれ異なる時代に移住したさまざまな出自の「民族ドイツ人」が集まっていることが明らかになった。 また、多様な移民集団が集住するカストロ市とその周辺地域で詳細な現地調査を行った結果、各移民集団の特性および移民集団間の関係性に関するデータや資料が入手できた。ドイツ系では、ルーテル教会の1899年以降の洗礼・堅信、結婚、葬儀、行事等の教会記録を入手した。またテラ・ノーヴァ移住地では、ドイツ系移民の祖国との紐帯、宗教と入植地との関係、人口動態、農業経営の変遷、他移民集団との関係、ドイツ文化の継承などに関する聞き取り調査と資料収集ができた。オランダ系では、毎年カストロランダ市で開催される世界最大級の畜産市「アグロレイテ」を見学し、彼らの近代的な酪農経営の実態を調査することで、移民史的には後発部隊のオランダ系が、本地域はもとよりブラジル全体の畜産業の発展に果たした重要な役割が明らかになった。また、カランベイ市のブラジル・オランダ文化協会では、彼らの祖国との緊密な交流や、オランダ文化の継承に対する積極的な姿勢が感知された。日系では、戦後のコチア移民の本地域への流入や、彼らがジャガイモ栽培を中心に当地の農業に果たした役割などについて、ドイツ・オランダ系移民との関係性も視野に入れながら、カストロ文化体育協会とウニカストロ(日系農業組合)で聞き取り調査や議事録の分析を進めた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画通り、本年度はブラジル南部諸州(パラナ・サンタカタリーナ・リオグランデドスル州)、とりわけその中でもさまざまな外国移民の集住地となったパラナ州を事例に、19世紀以降の各移民集団の入植史や現状を詳しく把握することができた。また、カストロ市とその周辺地域を対象に、メンバーそれぞれが分担して、ドイツ系、オランダ系、日系移民の移住史や経済・社会・文化的特性、祖国との結びつき、移民集団間のつながりなどについて、本格的な現地調査を始動させ、多くの一次資料やデータを収集することができた。これらの資料やデータの分析・考察を加速化させることで、今後検討すべき重要な調査テーマが絞り込まれ、次年度現地調査のさらなる深化を期待することができる。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、所期の計画通りに現地調査と分析を進めていく予定である。すなわち、ドイツ系、オランダ系、日系移民の調査に関しては、今年度の現地調査で入手した資料やデータの分析を鋭意進め、次年度中に学会での研究発表や論文執筆を行う。そのうえで、あと1~2年を目途に、各移民集団の調査を終え研究をまとめる。一方、まだ詳細な現地調査を実施していないイタリア系、ポーランド系、ウクライナ系などの移民集団に関しては、再来年度以降現地調査に着手すべく、来年度中に調査計画を練る予定である。
|