研究課題/領域番号 |
18H00767
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
丸山 浩明 立教大学, 文学部, 教授 (50219573)
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研究分担者 |
ドナシメント アントニー 立教大学, ランゲージセンター, 教育講師 (30734991)
山本 充 専修大学, 文学部, 教授 (60230588)
北村 暁夫 日本女子大学, 文学部, 教授 (00186264)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | トランスナショナリズム / 移民 / ブラジル / パラナ州 / 非同化適応戦略 / カストロ / カストロランダ / テラノーヴァ |
研究実績の概要 |
本年度はさまざまな移民集団が集住するパラナ州カストロ市を対象に、ドイツ系、オランダ系、日系移民に関する詳細な現地調査を実施し、各国移民集団の特性と移民集団間の関係性について分析を進めた。 ドイツ系に関しては、19世紀以降のパラナ州への移民流について、その全体像を分析した結果、ヴォルガ・ドイツ人が大量に流入した1870年代後半、敗戦国のドイツより移民が流出した第一次世界大戦後、そして東欧諸国からドナウ・シュヴァーベン人(民族ドイツ人)が流出した第二次世界大戦後に、当地にドイツ系移民の特筆すべき流入が認められることがわかった。また、1933年に設置されたテラノーヴァ移住地では、ドイツの広範囲から多様な職業の移民が入植して、乳牛や豚の飼育を中心とする家族農業が進められたこと、ドイツ文化の継承を目的とする年中行事やドイツ語教室が積極的に開催されていることなどが明らかになった。 オランダ系に関しては、オランダ留学財団の支援を得て運営されているオランダ語学校や「カストロランダ・オランダ民族グループ」による、言語や民族文化の積極的な継承活動の実態と課題が明らかになった。また、民族的紐帯の維持・強化を目的とするさまざまな年中行事や、オランダ系移民の具体的な婚姻関係についても調査した。その結果、世代の移行に伴うオランダ語の喪失、同民族間の婚姻関係の減少、植民地外への居住地の拡大といった実態が明らかになった。オランダ系の主要な生業である酪農経営に関しては、ロボット自動搾乳機や回転式搾乳機を導入した近代的酪農業の実態が明らかになった。 日系に関しては、コチア青年移民のコミュニティ史を調査した結果、ほぼ半数が独立農となった半面、半分は農外部門へ転職した実態が判明した。そこで、両者の代表的な事例移民のライフヒストリーを分析することで、何が両者を分ける要因として作用したのか多角的に検討を始めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
昨年度の調査・研究を引き継ぎ、本年度もブラジル南部パラナ州のカストロ市とその周辺地域を対象に、メンバーそれぞれが分担してドイツ系、オランダ系、日系移民の移民史、経済・社会・文化的特性、祖国との紐帯、各国移民集団間の繋がりなどについて現地調査を実施した。その結果、多数の一次資料やデータの収集と分析が進展し、あと1回の補足調査を待って現地調査の終了ならびに研究論文の上梓が可能な状況になった。また、各国移民の詳細な事例研究を位置づけるための、パラナ州やカストロ市の移民史の全体像についても調査が進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
次年度以降も、所期の計画通りに現地調査と分析を進める予定である。メンバー各自の研究の進捗状況を踏まえると、ドイツ系、オランダ系、日系移民に関してはあと1回の補足調査を目途に現地調査を終了し、学会での研究発表や論文執筆に研究の重点を移す。一方、まだ詳細な現地調査を実施していないイタリア系や東欧系移民に関しては、次年度以降に調査に着手する。さらに、パラナ州やカストロ市における移民史に関しても、これまでに入手した19世紀後半~20世紀初頭の植民計画図の復元・解析、史料の収集を継続して、本地域の移民史の全貌を解明する予定である。
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