研究実績の概要 |
コロナ禍の影響が続き解析ソフトへのアクセスが限られた年度前半は,昨年度作成した30mDEMを用いた日本の地形分類データの検証と結果の取りまとめ,データ公開サイトの作成を行った(Iwahashi et al., 2021).当該データは地形学的分類と地質工学的分類を大きな矛盾なく両立させ,沖積平野から山地に至る多様な斜面について地盤脆弱性を反映した地形分類を実現しており,既存の地形分類図が無い地域での地形の概要把握の他,山地の土砂災害頻発域や洪水の湛水域の予測,土壌の推定に役立つと考えられる.他,先行研究で作成した全球の280mDEMによる地形分類図(Iwahashi et al., 2018)をプロキシに用いた米国でのVs30(表層30mのS波速度;地盤の揺れやすさの指標として使われる)の検証に参加した(Mital et al., 2021). 年度後半は,日本での実験による手法確立を基に,全球の90mメッシュDEMを用いたデータの作成に着手した.まず区割りの検討を行い,MERIT BASINS(Lin et al., 2020)の大分水域を利用し,全球を67の領域に分割したポリゴンデータセットを作成した.地形量の計算・領域分割・クラスタリングについては基本的に日本での実験結果を踏襲したが,分割スケール等を再検討した他,MERIT BASINSの集水域データを重畳し,似た形の斜面が集水域の尾根筋で分割されるように設計した.これは,先行研究における領域分割の問題の軽減と,MERIT BASINSに含まれる集水域IDと上流・下流集水域のIDを,ポリゴン属性として結合可能とするためである.作成したポリゴンデータセットは,地形量の値等の中間成果を含めて公開サイトに掲載した。クラスタリング結果を直接地形分類図として用いる他,ユーザーがカスタマイズした地形分類図の作成が可能と考えられる.
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