研究課題/領域番号 |
18H00779
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
井口 欣也 埼玉大学, 人文社会科学研究科, 教授 (90283027)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | アンデス文明 / 形成期 / クントゥル・ワシ / 考古学 / 文化人類学 / ペルー / 文明形成 / 社会複雑化 |
研究実績の概要 |
研究課題遂行のため、2019年8月12日から9月18日の日程でペルー共和国に赴き、同国北部カハマルカ県のクントゥル・ワシ遺跡において、ペルー人の研究協力者とともに約3週間の発掘調査を実施した。発掘は、昨年度の現地調査の検討結果を踏まえ、予定どおり同遺跡の神殿領域外の下方テラス(第4テラス)において、2カ所のトレンチを設定して実施した。成果として、同遺跡の2時期目(クントゥル・ワシ期)と3時期目(コパ期)の活動を示す遺構と遺物が検出され、かねてからの見通し通り、この神殿を支えるさまざまな活動が、神殿領域外の下方テラス行われていたことが明らかとなった。また、ドローンを使用した写真撮影と地形測量を実施し、同遺跡全体の地形とその利用における時期的変化を分析するための基礎資料を得ることができた。 さらに、米国の研究協力者とともに同遺跡出土土器の原材料の岩石学的分析と、土器製作に使用された顔料の化学分析に着手した。同時に、現地で同位体生態学を専門とする日本の研究協力者とともに、同位体比分析のため動物骨資料のサンプル資料を抽出し、ペルー文化省の許可を得て日本に輸出することができた。 また、ペルーの滞在期間中に2つの国際シンポジウムに参加し、これまでのクントゥル・ワシ遺跡調査研究成果について発表をおこなうとともに、他の研究者と意見交換をすることができた。 国内においては、発掘調査で得られた図面データのデジタル化と出土遺物情報の整理をおこない、分析作業に着手した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度のクントゥル・ワシ遺跡発掘調査によって、かねてからの見通し通り、同遺跡の神殿領域外の発掘調査によって神殿を支える活動のデータが得られ、本研究課題の焦点となる神殿の資源利用について分析対象となるデータが得られたこと、また、同遺跡の資源利用にかかわる自然科学分析を実施したことから、順調に研究が進展したと判断できる。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究成果を検討した結果、今後の本研究課題の推進方策としては、以下の点が挙げられる。 1.本年度のクントゥル・ワシ遺跡の第4テラスの発掘調査によって、同テラスとともにその一段上の第3テラスにおいても、クントゥル・ワシ期とコパ期の活動があったとの見通しが得られた。そのため、今後の方針としては、同遺跡のテラスのなかでもっとも広い面積を有する第3テラスの発掘調査を実施することが重要なデータ収集作業となる。 2.本年度において着手した自然科学分析(土器原材料の岩石学的分析と化学分析、動物骨の同位体比分析)を進め、本研究課題の遂行に資する分析結果を得る。 3.国内研究として、本年度得られた考古資料と、これまでに蓄積された同遺跡の膨大なデータを統合しながらこの神殿と社会の変容過程を探求するとともに、アンデス形成期全体のマクロな視点から、文明形成過程における社会複雑化について理論的な研究を推進する。
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