研究課題/領域番号 |
18H00788
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研究機関 | 関西外国語大学 |
研究代表者 |
近藤 英俊 関西外国語大学, 外国語学部, 教授 (40351556)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 妖術 / 偶然性 / 驚き / 都市 / フラックス / 出来事 |
研究実績の概要 |
今年度はコロナパンデミックのせいで現地調査を全て断念せざるをえなかった。このため研究は文献研究とこれまでの調査及び文献研究に基づく執筆に限定されることになった。文献研究と執筆では、とくに理論的課題に焦点を置いた。 本研究では、偶然性と妖術現象との関りを主たるテーマにしている。本年度は前年度に引き続き、偶然的事態に対する一般的情緒的反応が「驚き」であり、その驚きの情がアフリカにおいては妖術と結びつく可能性を、民族誌的研究を渉猟することで明らかにしようとした。その成果の一部は論集『現代世界の呪術』の第一章「偶然と必然を結ぶ妖術」として発表した。この論文で示した見解が、いまだ発展途上とはいえ、本研究全体の理論的骨子を形作ることになった。 本研究の今一つの重要なテーマは、アフリカの都市部で現在進行している社会文化変化と妖術の関りについて考察することにある。本年度は近年のアフリカ都市研究の成果を把握すべく、本格的な文献研究に乗り出した。このうち注目されているアブドゥマリク・シモンの研究を私のこれまでの研究と照らし合わせることで、アフリカ都市社会文化の変化を複数の文化が錯綜する「フラックス」として、そしてその変化の只中の人々の生を出会いによって再生する「出来事」として理解しうるという観点を打ち出した。 そして上記の理論的アプローチを精緻にし、それをもとに現地調査を分析する作業を、単行本の執筆というかたちで実行に移した。その草稿は、暫時研究者及び学生と研究者に見せ、フィードバックをもらっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
ナイジェリアのコロナパンデミックとそれに伴う治安のかつてない悪化、及び日本国内のコロナパンデミックのせいで、繰り越し分のものも含め、3回予定していた現地調査を全て断念することになった。本研究は現地調査を柱としており、現地調査抜きには申請書で記した目的を達成しえない。計画では5年間に10回の調査をすることになっているが、3年目のこの時点で3回の調査しか成しえておらず、計画の達成は困難になってきた。 文献研究と執筆については、上記「研究実績」にもあるように継続している。ただし執筆には本来現地調査をもう少しした上でその結果を反映させたいと考えていた。それが叶わないため、本研究の現地調査の不足分を補うべく、他研究者の民族誌的研究と私が以前行った調査結果も分析対象とした。執筆した論文及び執筆中の単行本は本研究で得た新たな理論的知見をもとにこれらを分析するという体裁をとっている。
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今後の研究の推進方策 |
現地調査が実施できるかどうかは、ナイジェリアのコロナパンデミックが終わること、さらに治安が改善するかどうかにかかっている。この時点ではその見通しは立っておらず、予定通り全10回の調査が実施できるかはかなり難しい情勢である。 現地調査の不足分を埋めるべくオンライン調査の可能性を模索している。しかし現地の通信環境は悪く、調査協力者のほとんどがコンピューターや質のいいスマートフォンを所持していない。そうした機器の購入や送付、調査協力への報酬を日本からどのように支払うべきかなど課題が山積している。なかなか妙案はないが、目下、オンライン調査に向けて他の研究者とも相談し方策を検討している。
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