研究課題/領域番号 |
18H00795
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
岡村 忠生 京都大学, 法学研究科, 教授 (30183768)
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研究分担者 |
渡辺 徹也 早稲田大学, 法学学術院, 教授 (10273393)
高橋 祐介 名古屋大学, 法学研究科, 教授 (50304291)
酒井 貴子 大阪府立大学, 経済学研究科, 教授 (40359782)
小塚 真啓 岡山大学, 社会文化科学研究科, 准教授 (60547082)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 取得価額 / ベイシス / 法人税 / ブロックチェーン |
研究実績の概要 |
本年度は、研究の2年目として、消費課税とベイシスの不在や法人課税の多元性とベイシスに着目し、ベイシスの複合や連動などを念頭に置いた高機能なベイシスのあり方を軸に、現実に存在する具体的な事象を踏まえた検討を行った。 法人組織に関し、企業法がインセンティブ・バーゲニングに与える影響を基軸にしつつ税制がさらにそれに与える/受ける影響、個人が法人へ非上場株式を譲渡した場合のみなし譲渡課税、返還債務を基軸とした法人税法上の公正処理基準のあり方、株式交付制度と課税のあり方、擬似ストックオプション制度課税、関連会社に係る有利発行該当性について検討を行った。いずれもベイシスの変動が課税結果を大きく左右する事象である。さらに、近時の経済のデジタル化と課税関係(個人所得税・法人所得税・消費税・手続)や、シェアリング・エコノミーが与える所得課税への影響などについても検討を行っている。 非法人組織体(事業体)課税については、ベイシスを念頭に置きつつ、わが国のパススルー課税制度のあり方を検討した。 損失や消費課税などに関し、連結納税における投資簿価修正の今後のあり方、消費課税が抱える現在の問題(国際取引含む)について検討を行ったほか、一般的租税回避否認規定(GAAR)の適用に関し、いわゆるGAAR Panelの比較法的検討を行った。 ブロックチェーンの活用などに関し、UCI(University of California Irvine)ロースクール主催のカンファレンスに参加し、米国をはじめとする諸外国の租税行政でのデータサイエンスをはじめとする先進的なICTの活用事例などについて情報収集を進めると同時に、参加していた法学者やエンジニア、政策当局者と意見交換も行った。 なお、新型コロナウイルスの感染拡大により不可能となった外国調査については、繰越・再繰越年度に遠隔方式による調査によって代替した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度である第1年度では、ベイシスのクローニングという基礎的問題の検討を、法人課税と消費課税の関係、組織再編税制、非法人事業体課税、ベイシスと損失など他の租税属性との関係などの側面から進めるとともに、ブロックチェーンについての基礎的知見を共有し、その応用可能性を探った。また第2年度である本年度は、上記のように消費課税とベイシスの不在や法人課税の多元性とベイシスに着目し、ベイシスの複合や連動などを念頭に置いた高機能なベイシスのあり方を軸に、現実に存在する具体的な事象を踏まえた検討を行った。両年度ともベイシスが生じる具体的な事象を前提として、多様な現象に広く着目し、多元的な検討を行っているといえる。第2年度の研究は、新型コロナウイルスの感染拡大による研究計画に沿った形で、おおむね順調に推移している。
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今後の研究の推進方策 |
当初計画に従い、次年度は法人課税の多元性とベイシスに焦点を当てた研究を引き続き行うほか、人的要素に係る租税属性をベイシスに組み込んだ公平な課税を追求する方向で、個人消費を指標とする課税の公平性の研究を行う。消費課税の構造の分析については、当初計画通り渡辺と酒井が、再分配の側面は高橋が、ブロックチェーン技術応用を踏まえた数値化やモデル化は小塚が担当する予定である。本研究メンバーの所属する租税法学会の統一テーマが「消費課税の将来構想」であり、酒井が報告者、渡辺がコメンテーターとして参加する予定であることから、他の研究者との研究交流を深める形で、消費課税の構造分析を深めたい。 なお、新型コロナウイルス蔓延のため、対面での研究会実施が困難になっているところから、今後の状況改善を見込んで旅費は計上しつつも、前年度末から始まったオンライン上での研究会の実施を、今後も継続的に行う予定である。
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