研究課題/領域番号 |
18H00801
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
青木 孝之 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (40381199)
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研究分担者 |
後藤 昭 青山学院大学, 法務研究科, 教授 (00143256)
笹倉 香奈 甲南大学, 法学部, 教授 (00516982)
王 雲海 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (30240568)
緑 大輔 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (50389053)
本庄 武 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (60345444)
葛野 尋之 一橋大学, 大学院法学研究科, 教授 (90221928)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 誤判原因 / 再審 / 検察官 / 刑事弁護 / 事実認定 / 2016年刑事訴訟法改正 / 疑似当事者主義 / 精密司法 |
研究実績の概要 |
誤判原因とその対策を研究する一環として、2016年刑事訴訟法改正の分析、検察官の権限に関する分析、起訴前勾留の分析、犯人識別供述の信用性判断、イノセンスプロジェクト分析、SBS(揺さぶられっ子症候群)の刑事訴追に関する事例研究、中国における死刑事件と誤判の状況、システム理論についての分析を同時並行的に実施するとともに、これらを中間的に総括する形で2018年11月3日に研究会を実施した。これに関連して、(1)弁護人による接見時の情報通信機器の使用をめぐる法的問題、(2)未決拘禁の審査手続、(3)迅速な裁判の要請、(4)犯人識別供述の信用性、(5)伝聞法則に関する諸論稿、(6)違法収集証拠排除法則と捜査機関の後行行為、(7)乳幼児揺さぶられ症候群に関する諸論稿、(8)司法と福祉の連携におけるアカウンタビリティのあり方、(9)判決前調査制度を導入するに当たっての課題、(10)中国の憲法改正と監察法の制定などの諸論稿を公表することができた。また、刑事司法の全体像について、(11)精密司法と疑似当事者主義に関する論稿を公表した。 これに加えて、本研究課題参加メンバー全員に加えて、中国の刑事訴訟法研究者および日本国内で再審制度に精通する研究者とともに、誤判原因とその対策について、2019年3月16日に、一橋大学において合同研究会「日中の刑事司法における誤判の発見、予防及び救済」を実施した。この研究会においては、2018年中国刑事訴訟法第3次改正と日本の裁判員制度について分析するととともに、日本および中国の誤判是正にかかわる諸制度(とくに再審制度)を中心に研究報告がなされた。アメリカのイノセンス・プロジェクトの実施状況について、渡航して現地調査を実施するとともに、現地研究者・法曹実務家との人的交流の機会を設定することができた。また、中国に渡航し、現地研究者との人的交流の機会を設定することもできた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の計画どおり、中国人民大学等の刑事訴訟法研究者とともに、研究会を実施するのみならず、そこでは誤判原因と対策についての研究報告が数多く行われ、意見交換がなされた。また、調査対象である中国、台湾、アメリカのいずれに対しても、それぞれ本研究参加メンバーが渡航し、研究のための人的交流を行い、次年度以降の調査・研究のための前提的な環境の整備を行った。その上で、本研究課題である誤判原因とその対策に関して、多様な観点からの研究を遂行し、本研究課題に参加するメンバーによって、数多くの論文の公刊がなされた。他方で、これら多様な研究の全体を統合するアプローチについては、方向性が明確に定まりきれていない側面もある。 そのため、おおむね順調に進展しているとの評価を行った。
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今後の研究の推進方策 |
2018年度に引き続き、アメリカ、中国、台湾それぞれの誤判原因と対策の実情について、調査研究を遂行する。アメリカのイノセンス・プロジェクトの実施状況とその課題について、継続的に調査するとともに、中国の刑事訴訟法改正および監察法制定を受けてのその後の実務運用の動向、台湾における刑事弁護制度の体制などを、渡航調査の際の調査事項として想定している。 また、中国との関係では、2019年度も中国人民大学をはじめとする刑事訴訟法研究者と合同して研究会を実施し、人的交流を強化するとともに、誤判原因とその対策について、再審以外の側面から研究を遂行し、刑事司法全体の観点から誤判原因を分析するための基盤を整備する予定である。 また、2018年度に引き続き、検察官権限の在り方、自白採取過程に関連しての刑事弁護体制および身体拘束制度の在り方、2016年刑事訴訟法改正の影響については、継続的課題として研究を行い、理論構築のための作業を行う。
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