研究課題
本研究を通じて、裁判員制度導入後や平成28年の刑事訴訟法改正が、刑事裁判の在り方にどのような変化を生じさせたかを描出し、現在存在する課題とそれに対して求められる制度改善の方向性についての知見を得た。新型コロナウイルス感染症の流行に伴い、計画の遂行について変更が生じたものの、以下の通り具体的な研究成果を生み出した。第1に、日本の刑事裁判の特色を相対化してとらえるために、中国の刑事訴訟法研究者との間の交流事業を遂行し、2022年3月に日本とシンポジウムを開催し、日本と中国の刑事裁判における誤判への対応策や公判中心主義の在り方、訴追の在り方について対比的に検討を行い、両国の抱える問題と対応策について相互理解を深めた。特に公判中心主義を主題として行ったシンポジウムの成果は書籍『刑事訴訟における公判中心主義――日本と中国』として刊行した。第2に、裁判員裁判を導入してから10年余りの間にどのような変化が生じ、どのような課題があるかについて、(1)公判中心主義、(2)事実認定、(3)量刑、(4)刑事弁護の観点から分析を行い、公開講座としてその成果を還元する事業を実施した。この公開講座の内容も、捜査手続の改革動向や裁判員裁判の全体的な実施状況にかかる解説および資料などを加えた上で、一般向けの書籍『裁判員裁判の現在――その10年の成果と課題』として刊行した。第3に、上記各成果とは別に、研究分担者が個別に本研究の成果を各論的に発表した。具体的には、(1)誤判問題とそれへの対応についての連載「冤罪を考える」を発表するとともに、いわゆるSBS(乳児揺さぶられ症候群)事件を対象にした分析と対応の実践に取り組んだ。(2)被告人の逃亡防止のための英国の電子監視措置、(3)弁護人の接見における電子機器利用、(4)新型コロナウイルス感染症の流行に対する日米両国の裁判所の対応などが発表された。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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