研究課題/領域番号 |
18H00805
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤田 友敬 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80209064)
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研究分担者 |
笹岡 愛美 横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 准教授 (50557634)
後藤 元 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (60361458)
増田 史子 岡山大学, 社会文化科学研究科, 教授 (60362547)
南 健悟 日本大学, 法学部, 准教授 (70556844)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 海事法 / 自律航行 / 極域航行 |
研究実績の概要 |
自律航行船等による運航、極域航行の各々について下記の検討を行った。 (a)自律航行船等による運航 前年度の検討に引き続き、既存の海事法制に含まれるルール(特に国際条約及びそれに基づく基準等を中心に)のうち、船舶の航行が船員による操船を前提としなくなることで直接影響を受けるものにつきどのような内容の手当てがあり得るかを検討した。その際に、(i)公法的規律(たとえば船舶の安全性をめぐる公法的規制及び海上衝突予防規則(COLREGS)の適用)と、(ii)私法的規律(船舶衝突条約上の過失の扱い、油濁損害における民事責任条約の責任集中の適用のあり方、堪航能力担保義務の内容、船主責任制限制度の適用等)とに分けて検討を進めた。条文適用上の問題点に関してはほぼ結論が出たものの、政策的な問題(遠隔操作者にどこまで責任を負わせるか)については、さらに検討すべき課題が少なくないことが分かった。 (b)極域航行 前年度の検討により明らかになった、現在の極域航行の実態や将来の見込みを前提として、既存の海事法制に含まれるルールにつき、国際条約及びそれに基づく基準等を中心に網羅的に調査し、商業航海による海洋汚染事故についての民事責任、衝突事故を防止するための航法、極域固有の堪航能力担保義務の内容、極海域へのクルーズ船の増加に伴う法律問題等について、北極海独自の規律(立法及び解釈・運用を含む)を導入する必要があるか 、仮に必要だとするとどのような内容のものとすることが望ましいかを明らかにした。個別のルールの検討については、かなり深度のある検討ができたが、海事法の基礎理論へのフィードバックが今後の課題として残ることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
第2年度目における分析はおおむね順調に進んだと考えられる。これは、前年度においてすべての海事条約について網羅的に検討することを止め、重要なものに限定するという、方針転換を行ったことに負うところが大きい。また本研究にかかる海外文献(特に自律航行船関係)が次第に触れてきたことも、分析の進捗を助けた。 なお国際海事機関(IMO)法律委員会における自律航行船をめぐる問題の検討が停滞気味なっていることに加えて、2020年3月に予定されていた同委員会が、新型コロナウイルス感染の拡大に伴い中止されるに至ったため、国際機関レベルでの問題の検討は大きく遅れているのが現状である。さらに本研究課題の公表の場として予定されていた、2020年秋の万国海法会(CMI)東京国際会議が新型コロナウイルス感染の拡大に伴い2021年秋に延期されることなったため、成果公表に向けた準備も若干遅れるがでてきている。 このように研究課題をとりまく環境に当初予期できなかった変化が見られたことの影響はあるものの、そのことによって研究それ自体に大きな遅れが生じているわけではない。
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今後の研究の推進方策 |
自律航行船等による運航、極域航行の各々について下記の検討を行う。 (a)自律航行船等による運航 前年度に引き続き,(i)公法的規律(たとえば船舶の安全性をめぐる公法的規制や海上衝突予防規則(COLREGS)の適用)と、(ii)私法的規律(船舶衝突条約上の過失の扱い、油濁損害における民事責任条約の責任集中の適用のあり方、堪航能力担保義務の内容、船主責任制限制度の適用等)とに分けて検討を進める。条文適用上の技術的な対応と政策的な問題(遠隔操作者にどこまで責任を負わせるか)とでは、行う作業の性格が変わるので、両者を区別して検討し、最終成果のとりまとめ及び公表を目指す。 (b)極域航行 前年度に行った、極域航行をめぐる既存の海事法ルールに関する調査を前提に、北極海独自の規律(立法及び解釈・運用を含む)を導入する必要があるか、仮に必要だとするとどのような内容のものとすることが望ましいかを明らかにし(たとえば商業航海による海洋汚染事故についての民事責任、衝突事故を防止するための航法、極域固有の堪航能力担保義務の内容、極海域へのクルーズ船の増加に伴う法律問題等が検討候補となる)、それらのルールのうち技術的な手当てにとどまらず従来の海事法の基本的枠組みの検討を要請するものについて理論的な検討をさらに進め、基礎理論へのフィードバックを行うことで、最終成果のとりまとめ及び公表を目指す。
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