研究課題/領域番号 |
18H00811
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平野 哲郎 立命館大学, 法務研究科, 教授 (00351338)
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研究分担者 |
渡辺 千原 立命館大学, 法学部, 教授 (50309085)
松村 由美 京都大学, 医学研究科, 教授 (10362493)
松宮 孝明 立命館大学, 法務研究科, 教授 (80199851)
磯部 哲 慶應義塾大学, 法務研究科(三田), 教授 (00337453)
小西 知世 明治大学, 法学部, 専任准教授 (90344853)
小谷 昌子 帝京大学, 法学部, 講師 (80638916)
米村 滋人 東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (40419990)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 医療安全 / 医療紛争解決 / ADR / 医療事故調査 / 医師法21条 |
研究実績の概要 |
2018年度は2018年6月17日に立命館大学で第1回研究会を、2019年2月17日に慶應義塾大学で第2回研究会を開催した。第1回研究会は医療事故調査と医療ADRについて現状と課題の報告が行われ、第2回研究会ではNPO法人医療紛争相談センター(千葉市)の医療ADRについて、運営サイドと調停委員から報告を受けた。民間の医療ADRは、運営資金の確保が課題ではあるものの、調停自体は応諾率も向上しており、保険会社の理解もあり履行率は100%であるという実情が分かった。 また、海外調査としてフランスの裁判所附属ではないものの、裁判官が出向して、法学者や医師らも協力して行われている医療ADRの実情調査を2018年9月に現地で行った際の報告も第2回研究会で行った。 これらの研究の結果、浮かび上がった課題は以下のとおりである。1.医療安全と紛争解決を連携させることのメリットとデメリット。2.連携させるとしたらどのような形が望ましいのか。3.事故調査のためにも紛争解決のためにも,警察介入や刑事責任追及はできる限り避けた方がよいこと。4.どのような場合には刑事責任追及もやむを得ないのか。5.刑事罰を,個人責任ではなく組織責任にできないか・医療安全担当者の紛争への関わり方にはどのような形がよいのか。6.医療事故保険(賠償責任保険ではない)を産科以外に普及させることはできないか。7.AI医療の普及などを考えると,人間の過失を前提とする損害賠償から,それを前提としない損失補償に転換する必要があるのではないか。8.院内の事故調査委員会はどの程度中立的なのか。9.事故調査報告書をADRや訴訟で利用することをどのようにとらえるか。10.民事や刑事ではなく,行政処分による医療の質のコントロールをどう活用するか。11.ADRや事故調査を持続可能なシステムとするために整備が必要なこと(特に経済的な採算確保)は何か。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
医療事故調査と医療紛争解決をつなぐ鍵としての医療安全文化をどのように醸成・普及させるかということについて、まず国内の医療事故調査とADRの実情を把握することができた。さらにフランスの医療紛争解決の状況について、弁護士、裁判官、学者から調査をすることができ、有益な示唆を得ることができた。 また、医療紛争相談センター(千葉)の協力を得て、利用者に対するアンケート及びインタビューを実施するめどがつき、倫理審査を申請するところまで進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
千葉県で10年にわたって民間での医療調停活動している医療紛争相談センターの協力を得て,利用者調査をアンケート及びインタビューによって行う。 アメリカとオーストラリアにおける医療ADRの調査,スウェーデンとニュージーランドの無過失補償制度の調査も行う。
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