本研究では、「モバイルマネーによる金融包摂」というテーマに取り組み、モバイルマネーの普及が途上国の貧困層に与える影響について現地調査を実施し実証的に検証している。また、貧困層に対する効果的な支援方法を模索すべく、モバイルマネーを用いたマッチングファンドという新しい手法を実験的に手掛け、援助ツールとしての可能性についても模索した。研究初年度(平成30年度)に、バングラデシュ縫製業の出稼ぎ労働者及びその地元家族を対象とする調査を開始して以来、継続的に電話インタビューによる追跡調査を行なって来た。家計パネル調査としては、高頻度で質の高いデータを集めることができた。また、プロジェクト遂行中に発生したCOVID-19の出現と感染拡大により、図らずも、パンデミック前後の家計の詳細なデータを収集する機会を得た。パンデミックが対象家計へ与えた影響についても検証を進め、厚生や送金行動に着目し分析を行い、検証結果をまとめた論文("Mobile money and shock-coping: Urban migrants and rural families in Bangladesh under the COVID-19 shock")を執筆し、国際ワークショップでも報告することができた。 また、バングラデシュの調査プロジェクトと並行して、昨年度、ウガンダの調査プロジェクトを発足させ、電話インタビューの手法を用いて、出稼ぎ者の有無などの家族形態の変化に関する情報収集を進めるとともに、出稼ぎ労働者のいる家計に対しては、送受金、消費、投資行動に関する情報を収集し、家族間の所得移転メカニズムの分析を進めている。
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