研究課題/領域番号 |
18H00839
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
日引 聡 東北大学, 経済学研究科, 教授 (30218739)
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研究分担者 |
松見 豊 名古屋大学, 宇宙地球環境研究所, 研究員 (30209605)
倉田 正充 上智大学, 経済学部, 准教授 (30757050)
高橋 和志 政策研究大学院大学, 政策研究科, 教授 (90450551)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | PM2.5 / 幼児健康被害 / 室内汚染 / 室外汚染 |
研究実績の概要 |
2019年度は、(A)個人の暴露量測定と健康被害ん計測に関する研究と(B)バングラデシュを対象にした全国世帯調査を利用した健康被害計測に関する研究の2つの研究を実施する計画であった。(A)については、調査票の作成、現地での調査協力者の選任などの調査体制の構築については、予定通り実施することができ、さらには、一部のプレテストを実施した。しかし、コロナウィルスの影響で2月に予定していたプレテストが実施できなかった。(B)については、研究成果を論文として取りまとめることができた。この研究では、PM2.5が、幼児の健康(幼児の発育不全(低体重や低身長)、咳や息切れなどの呼吸器系疾患に及ぼす影響、また、それらの影響に関する性差が存在するかどうかを分析した。分析の結果、以下の点について明らかになった。 (1)バイオマスを利用する調理器具の利用は、女児の呼吸器系疾患を促進するが、男児には影響を及ぼさない。これは、女児は、母親の食事の支度を手伝う習慣があり、男児に比べて台所に立つ頻度が高いため、男児よりも調理で利用する燃料から発生するPM2.5の影響を受けやすいということから生じているものと考えられる。 (2)出産前のPM2.5に対する母親への暴露は、妊娠中の母体を通じて、男児の成長障害を引き起こすが、女児の成長障害には影響を与えない。 (3)出産後の男児のPM2.5への暴露は成長障害を引き起こす一方、女児の暴露は影響を与えていない。 以上の研究成果を、国際的な学術雑誌に投稿し、受諾が決まった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初、(A)個人の暴露量測定と健康被害の計測に関する研究と(B)バングラデスを対象にした全国世帯調査を利用した健康被害計測に関する研究の2つの研究を実施予定であった。このうち、(B)については、計画通り実施することができたが、(A)については計画通り実行できなかった。具体的には、バングラデシュにおいてプレテストを実施する予定であったが、2020年2月に実施予定であったプレテストがコロナの影響で、実施できなくなってしまった(一部のプレテストは実施できた)。本来、このプレテストによって、調査方法を改善し、本調査を2020年度に実施予定であった。このため、2020年度において、至急プレテストを実施した上で、急いで本調査を実施したいと考えている。現状では、進捗状況としてはやや遅れている程度である。しかし、コロナ危機の現状を見ると、少なくとも今年度前半にプレテストを実施できる環境になく、今後調査ができる環境になるためには、かなりの時間を要することになり、2020年度におけるプレテスト及び本調査ができるかどうかかなり不透明な状況にある。このような状況になってしまうと、年度内に実施すべき研究計画で重要なものが実施できなくなり、大きな遅れにつながる可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
コロナの影響を受けるまでは、研究は順調に遂行されており、その研究成果も著名な学術誌に掲載されるなど、順調であった。2019年度に計画予定であった「個人の暴露量測定と健康被害の計測に関する研究」におけるプレ調査が実施できなかったため、2020年度のできるだけ早い時点で実施したいと考えている。しかし、コロナをめぐる世界情勢は依然厳しく、その実施が危ぶまれる。プレ調査が実施できなければ、本来今年度実施予定であった本調査の実施も延期しなければならない。このため、万が一、コロナによって、プレ調査や本調査を今年度実施することが困難になった場合には、研究計画を1年または2年延長することで、当初予定していた研究計画を遂行したいと考えている
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