研究課題/領域番号 |
18H00842
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 泰裕 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (30332703)
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研究分担者 |
大城 淳 沖縄大学, 法経学部, 准教授 (00713067)
山本 和博 大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10362633)
高橋 孝明 東京大学, 空間情報科学研究センター, 教授 (30262091)
田渕 隆俊 東京大学, 大学院経済学研究科(経済学部), 教授 (70133014)
大久保 敏弘 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (80510255)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 経済政策 / 空間経済学 / 都市経済学 / 人口動態 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の3つの研究成果を得た。まず、人口動態の経済厚生への影響を、市場規模の変化に注目して分析した。市場規模は生産における規模の経済性がある場合に企業活動を大きく引き付ける要因となる。これは自国市場効果と呼ばれ、空間経済学で注目されてきたが、そこでは人口移動との関係ばかりが扱われてきた。人口動態は人口移動のような社会増減だけでなく出生や死亡といった自然増減にも大きく左右されることに鑑み、自然増減と社会増減の両方が内生的に決まる枠組みを用いて、長寿化に起因する少子高齢化と人口移動が市場規模、ひいては経済厚生をどう左右するかを分析した。 次に、人口成長率が異なる地域や国の間で企業誘致活動などの地域経済政策を実行した場合に、資本の移動を通じた政策外部性の様子がどのように異なるかを分析した。これは、いわゆる租税競争の結果が人口構成にどう左右されるかを考察するものである。その結果、人口が増加している場合には資本に対する課税が過少になり標準的な「底辺への競争」が生じる可能性が高いのに対して、人口が減少する場合には逆に資本課税が過大になり、「頂点への競争」が生じる可能性が高いことを示した。 最後に、外国からの移住者のように、文化的背景が異なる人がいる状況で、選挙により政策が選ばれるとしたら、どのような結果が生じるのかを理論的に分析した。分析により、政策の決定と、文化的に少数派に属する人が多数派に溶け込もうとするかどうかの意思決定が相互依存的で、溶け込むことを拒否する状態と、溶け込もうとする状態との両方が生じうる、いわゆる複数均衡が生じることがわかった。また、前者の均衡と後者の均衡とを比べると、前者における公共支出の方が後者におけるそれよりも少なくなり、文化的な分断が公共支出を減少させることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度までで、おおむね基本的な理論分析が行えたと考えている。理論的な側面では、より踏み込んだ点である、人口移動と移動者の文化的背景とを考える作業が残っているが、それもある程度の目途がたっており、残る期間で十分実行可能であると思われる。実証的な側面は、基本的なデータ収集が終わっており、それを基に、理論分析をサポートするためのデータ収集、分析を行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
理論面では、基本的な分析を拡張する作業を継続していく。実証面では、理論結果を実証するためにどのようなデータが追加で必要か、また、どのような手法が最も適しているかを検討していく。
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