研究課題/領域番号 |
18H00845
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
井伊 雅子 一橋大学, 大学院経済学研究科, 教授 (50272787)
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研究分担者 |
葛西 龍樹 福島県立医科大学, 医学部, 教授 (80248228)
原 千秋 京都大学, 経済研究所, 教授 (90314468)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 医療情報 / 不確実性 / プライマリ・ヘルス・ケア / 費用対効果 / 医療制度改革 / 社会保障制度改革 |
研究実績の概要 |
意思決定理論で培われた「非合理」な効用関数や条件付確率を用いて、健康診断や医療行為全般の分析を試みた。 “Reasonable patient care under uncertainty” by Charles F. Manski (2018) などを参考にディスカッションを行なった。また、非合理な効用関数の例として取り上げられることもある、曖昧さ回避的な効用関数を持つ投資家の最適ポートフォリオ問題を解くことで、非合理な効用関数の特性を探った。 健診やがん検診は病気の早期発見に有用だと言われている。うつ病、不安症、認知症などのメンタルヘルスにおいても早期発見の有用性が議論されている。こうした予防医学的介入により、患者(被験者)の発病や病気の進行を抑え、所得や厚生を引き上げるだけではなく、治療費や社会保険料を抑え、財政健全化に寄与する可能性もある。 しかし、そうした健診やがん検診には有形無形のコストもかかる。日本ではメリットばかり強調されて、デメリットがほとんど議論されていない問題点を整理した。 対象となる健康問題として、メンタルヘルスを取り上げた。メンタルヘルスは世界中で大きな健康問題であるが、日本においては地域のニーズが高いにも関わらず、メンタルヘルスのマネジメントについて医療の診療の現場で、十分に取り上げられていない現状がある。 この問題を解決するため、海外の専門家を招聘し研究会を福島で行った(2018年11月21日から25日)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度は、意思決定理論のサーベイと分析を行った。また、今後の診療行動に関するフィールドワークやデータ収集の対象となる健康問題の検討を行った。
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今後の研究の推進方策 |
意思決定理論で培われた「非合理」な効用関数や条件付き確率の評価を適用して、健康診断や医療行為全般を分析する。特に、非合理な効用関数を持つ主体が過剰な健康診断や治療を受けることを、不確実性下の意思決定問題として定式化し、その帰結の社会的厚生への含意を明らかにする。 今年度は、患者と専門医の間に存在する非対称情報の交換の仲介役である家庭医の役割を仔細に分析する予定である。 理論分析と並行して、診療行動に関するフィールドワークやデータ収集も進める予定である。さらに、マスメディアなど、医師や医療機関以外から患者が受けとる情報の質を改善することで、意思決定をより合理的なものとすることができるか、その可能性も検討したい。 福島県南会津郡只見町で、不確実性下の意思決定に関して、今秋、集中ワークショップを開催する。
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