研究課題/領域番号 |
18H00852
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
宮川 努 学習院大学, 経済学部, 教授 (30272777)
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研究分担者 |
徳井 丞次 信州大学, 学術研究院社会科学系, 教授 (90192658)
川上 淳之 東洋大学, 経済学部, 准教授 (20601123)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 生産性 / 長期停滞 / 複数財 / スピルオーヴァー / 新陳代謝 |
研究実績の概要 |
研究実績としては、宮川は外木好美氏(立正大学)・石川貴幸氏(一橋大学大学院)とともに、資本財別の投資関数の計測を行い、これを経済産業研究所のディスカッション・ペーパー(RIETI DP. No.19-J-041)として公表している。さらにこの論文を改訂し、11月に第21回マクロコンファレンスで報告を行った。また石川貴幸氏と研究開発の効率性に関する論文を学習院大学の経済経営研究所の年報(2019年12月刊)から公刊した。また深尾京司氏(一橋大学)、滝澤美帆氏(学習院大学)、Hak, K. Pyo氏(ソウル大学)、Keun H. Rhee氏(Korea Productivity Center)との共著が、Barbara Fraumeni編のMeasuring Economic Growth and Productivity, Elsevier(2019年11月刊)に掲載された。これは財や資本側ではなく、労働の種類とIT資本との代替・補完関係を日韓で比較した論文である。 徳井は、水田岳志氏(一橋大学)と地域別のサービス価格の計測を通して地域別生産性がどのように変化するかという論文をInternational Productivity Monitorに投稿し2019年春に掲載された。また二人は農産物価格についても地域別の指数を計測した論文を経済産業研究所から公表した(RIETI DP. No.19-J-048)。 川上は、本社機能が複数財生産を効率よく運営する機能を果たしていることに着目し、「企業活動基本調査」を利用してこの本社機能と生産性向上との関係を実証した論文を、経済産業研究所から発表した(RIETI DP. No.19-J-061)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
我々は、研究の進捗状況を確認するため2019年度は8月に信州大学で、2月(2020年)に京都大学でミーティングを行った。京都大学でミーティングを行った理由は、宮川が年度後半に京都大学経済研究所のプロジェクト関連の研究で滞在していたためである。これらのミーティングでは、データの収集・整備の状況、それぞれの研究の進捗状況、共同研究のための理論的基礎などを議論した。 データの収集、整備に関しては、2018年度に引き続き、令和元年度は「企業活動基本調査」のデータを取得した。当初の予定では、「科学技術研究調査報告」及び「民間企業の研究活動に関する調査」も個票申請する予定であったが、2001年から2002年にかけての品目変更のコンバーターの変更や、経済センサス年における工業統計表分と従来の工業統計表分の断層調整などから「工業統計表」のデータ整備に時間を要することがわかり、当面「工業統計表」と「企業活動基本調査」のデータ整備とそれを利用した成果を出すことに集中していくことにした。 それぞれの研究に関しては、研究実績にあげた研究について報告を行い、今後さらに研究を発展させることができるかどうかを議論している。 ただし2020年2月以降は、新型コロナウイルスの感染拡大により、京都大学で確認した進捗状況をさらに確認する作業が滞っている。
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今後の研究の推進方策 |
2020年1月から始まった新型コロナウイルスの感染拡大により、いくらか研究計画の修正をせざるを得ないと考えている。 まず使用データについては、すでに「工業統計表」と「企業活動基本調査」のデータを取得している。計画ではさらに「科学技術研究調査報告」及び「民間企業の研究活動に関する調査」の個票を取得する予定だが、現時点でこれらの統計の所管官庁に個票申請を出すことは非常に難しく、当面はすでに取得した二つの統計の整備とそれを利用した分析に集中したい。 研究としては、整備された「工業統計表」のデータを利用して宮川及び川上が清瀧信宏プリンストン大学教授、Robert Dekle南カリフォルニア大学教授と共同研究している論文の再改訂を、夏ごろを目途に完成させたい。また新たに取得した「企業活動基本調査」については、川上が行っている複数財生産を行っている企業の本社機能と生産性に関する論文の延長推計に利用し、同論文の改訂を行う。徳井は、宮川、川上との共同論文のための理論的基礎付けについての研究を引き続き行い、夏頃には実証可能な理論的背景を提示できるようにする予定である。この他に宮川は、近年の先進国における設備投資の減少の要因が統計では十分に把握されていない無形資産投資の増加によるものではないかという仮説を実証的に検討する作業を行っている。 ただ、以上のデータ整備や研究の進捗は、新型コロナウイルスの感染がいつ収束するかにも依存している。3名の研究者は、従来に比べて研究室への出入りを自粛した上で、遠隔授業の準備にも追われており、平常時以上に研究に費やす時間が制約されている。3名はzoomなどを使って互いの進捗状況をできるだけ確認するように努めるが、もし新型コロナウイルスによる自粛期間が長引くようであれば、夏頃にあらためて研究スケジュールの見直しを行わざるを得ない可能性もある。
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備考 |
宮川努「イノベーションへの課題(中)「21世紀型」知識の蓄積が源泉」<経済教室>日本経済新聞、2019年12月24日. 川上淳之<やさしい経済学>全9回、日本経済新聞、2019年9月16-26日. 川上淳之「多様な働き方としての「副業」」日本の人事部LEADERS 8 2020年3月. https://jinjibu.jp/leaders/2020/ebook/html5.html#page=11
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