2020年までに収集したデータの分析から、以下のことが明らかになった。 (1) 学んだスキルと業務の内容(タスク)がマッチしているケース(スキル・マッチ)は、マッチの基準を緩くしても66%(より厳しく設定すると42%)でしかなく、マッチしていないケースは多い。(2) スキル・マッチは正の賃金プレミアムをもたらしている。(3) 高いスキルのシグナル(スキルテストの合格)は正の賃金プレミアムをもたらしている。(4) 賃金に対するシグナルの効果は、スキル・ミスマッチの時でも正である。 上記の結果のうち、2は職業訓練がその対象となる産業でより高く評価されていることを、3は高い職業スキルを持つ労働者が評価されていることを示している。さらに、4は職業スキルがスキル・ミスマッチの職種でも評価されていることを意味している。このことから、職業訓練が特定の職種にのみ有効な固有スキルだけでなく、多様な職種で有効な一般スキルの蓄積に有効であり、また企業もそのことを理解していると解釈することができる。 先行研究はスキル・マッチの賃金プレミアムに注目するが、スキルのレベルも含めて評価したものは非常に少なく、職業訓練についての実証研究はみあたらない。本研究ではスキルのマッチとレベルを組み合わせて分析したことにより、職業訓練がスキルがマッチしない職種でも生産性を向上させる効果がある可能性を示している。 また、2021年度の計画に計画していた卒業生の3回目の追跡調査を、2022年12月~2023年2月に実施した。その結果、本研究で追跡している1033名の職業訓練校卒業生のうち、816名を捕捉することができた。調査対象者は、訓練校を卒業してから5-7年を経ているものが多いが、職業訓練校卒業生をこの期間にわたって継続調査した例は、サブサハラ・アフリカ諸国ではほとんどないものと思われる。
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