研究実績の概要 |
研究計画の初年度に当たる本年度は、日本企業を対象とするサーベイを設計し、競争入札等所要の手続きを経て調査機関に委託・実施した。並行して政府統計のミクロデータを用いた分析を行い、いくつかをディスカッション・ペーパーとして公表した。 企業サーベイは、「企業活動基本調査」(経済産業省)の企業名簿から抽出した15,000社に2019年1月に調査票を送付し、2,500社強から回答を得た。調査事項は多岐にわたるが、基礎的な企業特性情報のほか、企業経営の方針、市場競争、労使関係、生産性向上への取り組み、経営革新・イノベーション、経済政策と企業経営、税制・補助金の利用状況などである。このサーベイ・データが入手できたのは2019年3月なので、次年度以降、これを用いた分析を行う。 政府統計のミクロデータを利用した分析としては、「企業活動基本調査」データを使用して、企業内の教育訓練投資が生産性に及ぼす効果の計測などを行い、ディスカッション・ペーパーとして公表した。また、会社法改正やコーポレートガバナンス・コード導入に伴う社外取締役の拡大が生産性に及ぼす効果について分析を行い、近々論文として公表する予定である。 以上のほか、従前より継続している研究の成果に改善を加え、生産性に関連する複数の論文を英文学術誌に掲載した。また、日本の生産性向上のための課題をエビデンスに基づいて包括的にまとめた書籍を刊行した。この書籍は複数の新聞・雑誌で書評に取り上げられており、生産性に関する社会的な関心の高さを示している。さらに、この書籍をもとに学会や大学のワークショップで報告を行ったほか、官庁の政策実務者、国会議員、公益法人、企業経営者などからの求めに応じて解説を行い、研究成果の普及に努めた。
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