研究計画の3年目に当たる本年度は、企業に対するサーベイ(初年度に行ったサーベイに回答した企業へのフォローアップ調査)、個人に対するサーベイを実施し、その結果に基づいて論文の執筆を行った。サーベイの調査票設計に当たっては、2020年に入って深刻化した新型コロナウイルス感染症の経済・社会への影響の重要性に鑑み、それが企業や就労者に及ぼす影響、関連する各種政策の利用実態等についても調査事項に加えた。 5本の邦文ディスカッション・ペーパー、3本の英文のディスカッション・ペーパーを執筆・公表した。このうち在宅勤務の生産性に関する論文1本は、新型コロナ発生後に欧州の代表的な経済系シンクタンクであるCEPRが発刊を始め、内外の経済学者が注目しているCovid Economicsに掲載された。また、資金繰り支援、持続化給付金、雇用調整助成金といった緊急時の企業支援政策の利用と生産性の関係についてのディスカッション・ペーパーは、改訂を加えた上で学術誌に投稿する準備を進めた。 並行して昨年度までにディスカッション・ペーパーとしていた研究論文をブラッシュアップした上で英文学術誌に投稿し、本研究計画の初年度に行った企業サーベイの結果を利用した価格・品質競争と生産性に関する論文を含む2本が採択された。また、昨年度に採択されていた企業統治制度改革と企業業績の関係についての論文が最終的に公刊された。これらのほか、邦文学術誌に1本の論文を掲載するとともに、学術書籍の1章として所載予定の論文を執筆した。 以上のほか、企業サーベイで収集した各種政策(補助金、税制等)の利用と企業パフォーマンスの関係などについて、政府統計のミクロデータとリンクさせた上で分析を継続しているところである。
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