研究課題/領域番号 |
18H00864
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
森口 千晶 一橋大学, 経済研究所, 教授 (40569050)
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研究分担者 |
井深 陽子 慶應義塾大学, 経済学部(三田), 教授 (20612279)
阿部 修人 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30323893)
野口 晴子 早稲田大学, 政治経済学術院, 教授 (90329318)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | 栄養格差 / 健康格差 / 食品価格 / 価格指数 |
研究実績の概要 |
本年度(2019年度)は、まず、初年度に「家計調査」と「小売物価統計調査」に栄養情報を連結して構築したデータセットを改良し、都道府県別のカロリーおよび栄養素価格指数の再推計を行った。具体的には、「小売物価統計調査」の価格を用いることによる測定誤差を最小化するために利用可能な品目については「家計調査」の購入数量を用いて食品価格を計算し、さらに分析の対象とする栄養素の種類を増やした。 次に、社会経済階層別の栄養摂取状況の研究、すなわち栄養格差の分析に着手した。まず、オーダーメード集計の申請を行い、1981-2015年の「家計調査」の世帯の年齢階級・所得階層別の食品購入データを取得し、これに栄養情報を連結した。このデータベースを用いて、世帯主の年齢階級・所得階層別に一世帯当たりの栄養素摂取量を試算し、所得階層間の栄養摂取量を比較した。世帯単位の栄養素摂取量という限界はあるが、高所得世帯ほど炭水化物に占める食物繊維の比率が高い一方で、脂質に占める不飽和脂肪酸の比率も高い等の興味深い分析結果を得ることができた。 上記の二つの研究成果を医療学会や労働経済学研究会で報告し、専門家から多くの有益な示唆を得た。特に、「家計調査」を用いた栄養格差の研究はこれまでになく、革新的なアプローチとして評価された。改善点の示唆を受けて、再びオーダーメード集計に申請して追加的な変数を取得するなど、より精緻な実証分析を行うための準備を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、初年度の都道府県別データを用いた研究を発展させ、より精確な栄養素価格指数の推計を行った。 栄養格差の研究については、当初の計画では「国民健康・栄養調査」と「国民生活基礎調査」の個票を用いる予定だったが、申請手続きに予想外に時間がかかったため、「家計調査」オーダーメード集計データを利用することに方針を転換した。新たな方針に基づいて、データベースの構築が完了し、予備的分析においても有用な知見を得るなど、栄養格差の本格的な実証分析に向けて順調な進展をみせた。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度の2020年度には、まず2019年度に整備した「家計調査」オーダーメード集計データを用いて、日本における栄養格差の長期的趨勢を明らかにする。さらに、所得階層別に栄養素価格指数を推計し、価格が栄養格差に与える影響も分析する。次に、「家計調査」を用いた推計の信頼性を検証するために、「国民健康・栄養調査」のデータを用いて、比較可能な集団について栄養素摂取量の推計を行い、両者の推計値を比較する。最後に、「家計調査」の年次データを用いて、世帯属性別の擬似パネルデータを構築し、食品需要関数および栄養素需要関数を推計し、栄養素需要の価格弾力性を明らかにする。
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