研究課題/領域番号 |
18H00865
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研究機関 | 椙山女学園大学 |
研究代表者 |
黒田 達朗 椙山女学園大学, 現代マネジメント学部, 教授 (00183319)
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研究分担者 |
宮澤 和俊 同志社大学, 経済学部, 教授 (00329749)
相浦 洋志 南山大学, 経済学部, 准教授 (50511177)
玉井 寿樹 名古屋大学, 経済学研究科, 准教授 (00456584)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 少子高齢化 / 世代間共助 / 高齢者の労働 / 人口減少 / 居住地選択 |
研究実績の概要 |
本年度は、近年のわが国の状況に関して具体的な資料を調べることをまず行った。世代間の居住地選択の影響については、以下のような現象を確認した。例えば、近年重視されている女性の労働参加に関するM字カーブの改善に関して、大都市部では非正規雇用が主であるのに対して、地方部では正規雇用が相対的に多い。その理由としては、通勤時間の違いだけでなく、両親との同居や近接した居住の影響が指摘されるなど、世代間の居住地の差異が労働市場へも大きな影響を与えている。また、近年開発が加速している自動車の自動化についても、今後居住形態に大きな影響を与えることが予想されるので、関連する資料を収集しながら実態を確認する作業を行った。とくに、自動運転の普及は、MaaSと呼ばれる交通システムの統合ないしシェアリング・エコノミーの急激な進展をもたらすと思われる。つまり、現在のように個々の家計が自家用車を保有するのではなく、「無人タクシー」を共有する社会が2030年前後には現出する可能性が高い。これにより、通常の駐車場は不要となり、土地需要が低下し地価の下落が起こる可能性が高い。また、高齢者の病院や買い物のアクセスは保証されることとなる。このような移動技術の変化が世代間の居住地選択へ与える影響も、研究課題の一つと思われる。 理論的な分野については、関連する研究をすでに進めていた玉井がTamai and Kamiguchi, 2018を公刊したこともあり、当該論文を中心に他のメンバーと議論をする機会を設けた。また、黒田と宮澤は、わが国の労働市場で課題となっている高齢者の労働期間の伸びが、出生率や孫世代の育児補助へ与える影響などを検討するための世代重複モデルを試作した。相浦は行政区域を跨いだ医療サービスのあり方を理論的に検討しており、今後は世代間の居住地選択への影響について拡張する予定である(Aiura, 2018)。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の研究実績の概要にも記したように、理論的な研究に関しては準備を進めている。ただし、モデルの設定によって明示的な解が得られない場合もあるため、メンバー間で議論を進めながら、研究目的に可能な限り近い理論的研究を2019年度は目指している。 同様に、上記のように、女性の労働問題に関係する世代間の居住地選択の影響を推測可能なデータ等の収集だけでなく、「国土のグランドデザイン2050」や「条件不利地域における集落の現況把握調査」を始めとし、それに関連した都市再生特別措置法の改正および支援措置などに関する国土計画的な資料の収集は概ね予定通り進めている。ただし、初年度に計画していた外資系企業を含む近年の企業立地のデータを収集は2019年度に行うこととした。また、マイクロデータについても、慶応義塾大学のデータベースへのアクセス権は確保しているが、詳細な確認は今後の課題である。それらの作業の進捗を待って、本研究で最終的に行う予定のシミュレーション分析の対象とする政策の具体的候補を抽出したい。
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今後の研究の推進方策 |
理論的研究に関しては、上記のように研究の基本的目的である世代間の居住地選択を中心とした自助・共助の分析について明示的な解が得られるモデルを最終的に構築する必要がある。このため、準備段階では世代重複モデル以外にも静学的な理論モデルをいくつか試作しつつ、研究グループのメンバーを中心に意見交換する機会をより多く設けたい。メンバー各自は、それぞれこれまでの実績から見て、得意とする分析手法にも違いがあるので、共同作業を進めることで、最終的により高度な分析結果を得るよう努めたい。 上記のように、より実証的なデータに基づいたシミュレーション分析がもう一方の最終的な目標であることから、そのための利用可能なマイクロデータの存在についての確認作業も、可能な限り早めに行いたい。 研究実績の概要にも記したように、本研究にも深く関係する研究テーマで、メンバー各自は以前より個別の研究を進めてきており、それらについて本年度も学会発表や学術誌への投稿を行うことにより、他の研究者からの意見や示唆を可能な限り獲得しながら、上記のような本研究の最終的な成果に活かしていきたい。
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