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2020 年度 実績報告書

近現代における「不自由な」労働者を再考する―18-20世紀の英国・英帝国を中心に

研究課題

研究課題/領域番号 18H00879
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

奥田 伸子  名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 教授 (00192675)

研究分担者 中沢 葉子 (並河葉子)  神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (10295743)
山本 千映  大阪大学, 経済学研究科, 教授 (10388415)
江里口 拓  西南学院大学, 経済学部, 教授 (60284478)
竹内 敬子  成蹊大学, 文学部, 教授 (80206945)
吉村 真美 (森本真美)  神戸女子大学, 文学部, 教授 (80263177)
三時 眞貴子  広島大学, 人間社会科学研究科(教), 准教授 (90335711)
大澤 広晃  法政大学, 文学部, 准教授 (90598781)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2022-03-31
キーワード不自由な労働者 / 囚人労働 / 自由主義 / ウェッブ夫妻 / 男性稼ぎ主モデル / アフリカ人労働者
研究実績の概要

2020年度はコロナウィルス感染拡大のため研究計画を変更せざるを得なかったが、収集済みの資料を視覚を変えて分析するなどして研究の推進に努めた。
20年9月の研究会では吉村(森本)真美が「19世紀イギリスの刑務所改革と囚人労働」と題した報告を行い、19世紀前半における囚人労働にかかわる当時の状況、言説を中心に報告した。囚人労働は流刑を中心に研究が行われ、国内における囚人労働は看過されがちであるので、吉村の研究の意義は大きい。江里口拓は「ビアトトリス・ポッター・ウェッブによる自由主義批判の視座」という報告を行い、ウエッブがおこなった新古典派経済学批判と介入主義的なニュー/リベラル自由主義思想の形成における貧困調査の持つ意味について考察した。
21年3月の研究会には、山本千映が「19世紀イングランドにおける働かない男たち」という報告を行った。この研究は1851年センサスを利用したものである。男性稼ぎ主モデルが支配的になりつつある社会で例外的存在と考えられる「働いていない」男性はどのような特徴があるかを考察した画期的な研究である。大澤広晃は「20世紀前半南アフリカにおけるアフリカ人労働者の『不自由』とヨーロッパ人・アフリカ人協議会:パス問題を中心に」と題する報告を行った。アパルトヘイト以前の南アでアフリカ人労働者の自由な労働を制約するパス制度とそれによる影響、現地のフィランソロピー団体の活動を多面的に分析し、20世紀における「不自由な労働者」概念の有用性を示した。
研究計画の見直し、研究会のスケジュールの遅れの結果、本研究は1年延長することなったが、21年3月の研究会までに研究分担者の研究報告はほぼ終了し、活発な意見交換によって「不自由な労働」に関する論点を深めることができた。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

2020年度はコロナウィルスの感染拡大の影響を強く受け、国内外の資料収集が全くできなかった。この事態を受けて、本研究の初年度に立てた研究計画を大きく変更することとなった。すでに収集した資料、オンラインで利用可能な資料を利用して研究の目的に合うようそれぞれが研究計画を立てるまでに時間を要した。20年3月に予定していた研究会を9月に延期し、オンラインで行い、20年度は当初と予定通り2回の研究会を行った。この段階では研究はやや遅れていた。結果として、2度にわたる繰越を行うことになった。
繰越を行った21年度も国内外の資料収集は困難であったが、変更した研究計画に従って、研究会を開催するとともに22年5月に開催される社会経済史学会におけるパネル報告の準備に入ることができた。
再度の繰越を行った22年度は社会経済史学会でのパネル報告を行うともに、国内研究者を招いて研究会を開催することができ、当初の計画はほぼ達成した。

今後の研究の推進方策

20年度は、国外における資料収集が全くできず、国内においても他大学が利用できないため、研究計画に大きな変更を迫られた。21年度に国内外での資料収集が可能となることを期して研究費を繰り越した、実際は21年度も国外での資料収集は困難であった。
しかし、手持ち資料の視覚を変えた柔軟な分析、オンライン資料の利用などにより研究の推進に目処が立ったので、21年度は各自の研究のさらに深めるとともに、22年の社会経済史学会でのパネルの組織のための準備作業に入ることとした。
20年度末までに、研究分担者7名の研究報告を行うことができた(研究代表者は21年度報告予定)。研究会では活発な意見交換を行うことができ、それぞれの研究内容について理解を深めるとともに「自由」と「不自由」の境界の曖昧さ、自由と経済的厚生水準の関連など、本研究の核となる論点がでそろった。
21年度は、各自の研究についてはこうした論点、および質疑応答の成果を生かしてそれぞれが研究を深めるとともに、この3年間の研究を通して、「不自由な」労働を考える上でジェンダー視点を取り入れることの重要性は浮かび上がってので、それぞれが可能な範囲でジェンダー視点を取り入れることとする。研究成果は最終年度終了時に報告書としてまとめることとし、21年度からその準備に入る。
パネル報告については、21年末の応募までに、パネル全体の方向性の決定、報告者、討論者の人選を行い、採択決定後準備会を開催する。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) (うち国際学会 1件) 図書 (3件)

  • [雑誌論文] スリランカにおける不自由労働と奴隷制度の廃止2020

    • 著者名/発表者名
      シーハン・デ・シルヴァ・ジャヤスリヤ、奥田伸子
    • 雑誌名

      人間文化研究(名古屋市立大学)

      巻: 34 ページ: 77-101

    • オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] 「アンソニー・クロスランド『福祉国家の将来』(1956)の歴史前提と制約要因:福祉国家の経済思想史の視座から」2020

    • 著者名/発表者名
      江里口拓
    • 雑誌名

      『西南学院大学経済学論集』

      巻: 55(1,2,3) ページ: 85-115

    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「十九世紀イギリスの刑務所改革と囚人労働 ―『不自由な労働力』の視点から」2020

    • 著者名/発表者名
      吉村(森本)真美
    • 雑誌名

      神戸女子大学史学会『神女大史学』

      巻: 37 ページ: 1-25

  • [学会発表] When did mothers work? Determinants of labour supply behaviour of married women in the late nineteenth century’2020

    • 著者名/発表者名
      Chiaki Yamamoto, Yoko Morishita
    • 学会等名
      Quantitative History Seminar, the University of Cambridge,
    • 国際学会
  • [図書] 『近現代世界における文明化の作用「交域」の視座から考える』2020

    • 著者名/発表者名
      大澤広晃・高岡祐介編
    • 総ページ数
      196
    • 出版者
      行路社
    • ISBN
      978-4875343981
  • [図書] 『問いからはじめる教育史』2020

    • 著者名/発表者名
      三時眞貴子・岩下誠、倉石一郎、姉川雄大(共著)
    • 総ページ数
      289
    • 出版者
      有斐閣
    • ISBN
      464115080X
  • [図書] 『グローバル経済史にジェンダー視点を接続する』2020

    • 著者名/発表者名
      山本千映・浅田進史・榎一江・武田泉他(分担執筆)
    • 総ページ数
      264
    • 出版者
      有斐閣
    • ISBN
      978-4818825666

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公開日: 2023-12-25  

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