研究課題/領域番号 |
18H00890
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山尾 佐智子 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (80812487)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 組織同一視(組織アイデンティティ) / グローバルビジネス / 多様性 / グローバル化 |
研究実績の概要 |
2018年度は(1)レビュー論文の作成、(2)国際学会での本研究関連報告と学術誌への投稿、(3)アンケート調査の準備作業の3つを実施する予定であった。 (1)レビュー論文については当初、本研究テーマである組織同一視の理論的根幹をなす、社会同一性理論(social identity theory)を国際人的資源管理論に適用した研究に絞ってレビュー作業を行った。しかし、研究会や学会で得られたフィードバックから、このままではインパクトのあるレビュー論文にはなりにくいと判断し、先行研究の対象を広げることにした。具体的には、グローバル企業の組織アイデンティティについて取り扱った研究を網羅的にレビューする方向である。この作業は継続中であり、次年度も引き続き行う。 (2)国際学会での報告については、予定通り6月中旬にマドリードで行われたInternational Human Resource Management 2018 Conferenceで報告を行い、数々の有益なフィードバックを得た。また英文学術雑誌(査読付き)に本研究と関連する論文を投稿し「修正して再投稿(revise & resubmit)」の評価を得た。 (3)2019年度にアンケート調査を実施したいと考えているため、2018年度はその準備作業を行い、理想的には質問項目を全て洗い出したいと考えていた。アンケートの質問項目の選定に時間がかかっており、2018年度中にはアンケートのひな型ができるまでに至らなかったので、次年度も作業を継続する。 計画外の収穫としては、本研究に関連して新たに海外共同研究者を得られたことである。メフディ・ブッセバー教授(グラスゴー大学)とは、かねてより共同研究の機会をうかがっていたが、より具体的な共同研究のテーマ絞りを始めた。今後も引き続き具体化に向けて話し合いを継続する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前述の研究実績の概要でも触れた通り、2018年度の研究活動として計画されていた研究活動、(1)レビュー論文の作成、(2)関連論文の国際学会での報告と学術誌への投稿、(3)アンケート調査の準備作業は、計画通りに進められたものと次年度に持ち越したものがある。しかしながら、当初予定していなかった成果(新たな海外共同研究者)もあるため、全体として見れば、研究はおおむね順調に進んでいると評価している。以下、各項目ごとに評価する。 (1)レビュー論文については、よりインパクトの大きい論文となることを目指し、カバーする先行研究の対象を広げることとした。当初の目標である、論文の完成には至っていないが、研究会や学会でフィードバックを得るなどの成果は得られている。このことから、研究は前進していると評価する。 (2)国際学会での報告ついては、予定通りである。また、学術雑誌への論文投稿に関しては、投稿するだけではなく、「修正して再投稿(revise & resubmit)」の評価を得られたことから、順調な進捗であると評価する。近年、経営学分野で国際的に認知されている英文学術雑誌の投稿論文掲載率は、1割を切ることもあり、「修正して再投稿」を得ること自体が困難である。そのため、この投稿論文はまだ査読中であり掲載が決まってはいないものの、今年度の成果は大きいものと言える。なお、この投稿論文は、シンガポール経営大学、トロント大学、メルボルン大学との共同研究の成果である。 (3)2018年度中にはアンケートのひな型ができなかったため、この点は計画よりも遅れている。しかしながら、アンケート調査は実施してしまうとやり直すことができないため、時間を十分に使って内容を練る必要がある。多少の遅れは誤差の範囲内であると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2019年度は、(1)レビュー論文の作成を継続する、(2)国際学会やワークショップへの参加により本研究全般に関するフィードバックを各方面から得る、(3)アンケート調査を実施する、という3つを実施目標とする。 (1)前述の通りレビュー論文は、グローバル企業の組織アイデンティティ(組織同一視)に関する先行研究の、網羅的なレビューという方向に転換した。2019年度夏まではレビューすべき先行研究の洗い出しを行い、夏以降秋までに原稿を書き上げる。書き上げた論文は、Academy of International Business(AIB)の2020年次大会発表論文として、11月下旬の応募締め切りまでにAIBに投稿する。 (2)2019年度は8月にボストンで行われるAcademy of Management (AOM) 2019 Annual Meetingsに参加し、この学会のワークショップやペーパーセッションで本研究の概要や関連論文を報告する予定である。AOMは世界最大の経営学会であるため、学会期間中、著名な研究者による数々のワークショップが実施され、最新の調査設計法やデータ分析法について学べる機会である。また、ペーパーセッションは本研究へのフィードバックを得られる貴重な機会でもある。この学会への参加は、アンケート調査の質問項目の選定に役立ち、また、2020~2021年度の研究活動の指針も得られると期待している。さらに、前述のメフディ・ブッセバー教授(グラスゴー大学)と、この学会参加中にミーティングをし、共同研究の具体化に向けてより話を詰めたいと考えている。 (3)アンケート調査は、AOMから得られる知見を調査に反映するため、2019年度後半の実施を検討している。
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