研究課題/領域番号 |
18H00890
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
山尾 佐智子 慶應義塾大学, 経営管理研究科(日吉), 准教授 (80812487)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 多様性 / アイデンティティ / グローバルビジネス / アイデンティティ |
研究実績の概要 |
2019年度は、(1)レビュー論文の作成を継続する、(2)国際学会やワークショップへの参加により本研究全般に関するフィードバックを各方面から得る、(3)アンケート調査を実施する、という3つを実施予定であった。 (1)2018年度に開始したレビュー論文の作成は、当初、社会同一性理論(social identity theory)を国際人的資源管理論に適用した研究に絞ってレビュー作業を行っていたが、グローバル企業の組織アイデンティティ(組織同一視)に関する先行研究を網羅的にレビューするという方向に拡大転換することにしたため、膨大な量の先行研究論文が見つかり作業が遅れている。2020年度も継続して取り組む予定である。 (2)2019年8月にボストンで行われるAcademy of Management (AOM) 2019 Annual Meetingsに予定通り参加し、この学会のペーパーセッションで本研究の関連論文を報告した。学会期間中は数々のワークショップに参加し、最新の研究動向について情報収集を行った。また、共同研究者との会合を持ち研究の進捗状況について確認し合い、論文の方向性について議論した。なお、学会開催地ボストンへの渡航の前にトロントのヨーク大学に立ち寄り、アヌープ・マドック教授と面会し、学術誌に投稿中の論文についての助言を仰いだ。 (3)2020年2月末にアンケート調査を実施した。日本企業の役員レベルにおいて多様化(特にジェンダー・ダイバーシティ)が進んでいないことから、上場企業に勤務する女性役職者を対象とした。分析を始めたばかりだが、興味深い結果が得られるものと期待している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で触れたように、2019年度の研究活動として計画されていた研究活動の3点のうち、計画通りに進められたものと2020年度も継続する予定のものがある。しかしながら、現時点で本プロジェクトに関連する論文が、国際学術誌で査読中または掲載された。したがって、全体として見れば、研究はおおむね順調に進んでいると評価する。以下、各項目ごとに記述する。 (1)レビュー論文は、カバーする先行研究の対象を広げることとしたため作業は遅れている。しかし、レビュー論文は新たに出版される論文にも目を向けつつ、過去の膨大な量の論文も精査していかなければならないため、そもそも作業量が多い。よりインパクトの大きな研究のためには仕方ない部分もあり、継続していくことに意味があると考えている。 (2)国際学会での報告ついては、予定通りである。2019年のAOM学会で報告した論文(国内共同研究)は、Journal of International Managementから「修正して再投稿(revise & resubmit)」の評価を得ており、再投稿のために現在改訂中である。また、別の論文(シンガポール、カナダ、オーストラリアとの国際共同研究)は、同じ学術雑誌で2回目のrevise & resubmitの段階まで来ている。おそらく次は受理(accept)となるものと思う。以上から、国際学会での報告と共同研究は、順調な進捗である。 (3)年度末に予定していたアンケート調査を実施したため、この目的は順調に達成・進捗した。今後は得られたデータをもとに分析を進め、2021年度に国際学会で報告し、国際学術誌への投稿を目指す。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、前年度の課題を一部継続し、かつ、新たなアンケート調査を実施する。具体的には下記3つが主な実施計画である。 (1)2018年度に開始したレビュー論文作成は、膨大な量の先行研究論文が見つかったために作業が遅れており、今年度も継続する。2021年度の国際学会で報告ができるよう、1年間かけて準備したい。 (2)新型コロナウィルスのために開催が危ぶまれているが、もし開催されれば2020年8月に予定されているAcademy of Management (AOM) 2020 Annual Meetings(開催地はバンクーバー)に参加し、ワークショップやペーパーセッションに出て最新の研究動向を追跡し、情報収集と情報交換を行う。 (3)2019年度後半に実施したアンケート調査のデータ分析を行う。また、このアンケートに先立ち実施したインタビュー調査のデータ分析も継続的に行う。 (4)2019年度の調査の対象者は上場企業の女性管理職に限定した比較的小規模のものだったので、今年は対象を広げ、できれば外資系企業と日本企業の従業員から回答を得るべく、もう少し大掛かりな調査を実施する予定である。
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