研究課題/領域番号 |
18H00892
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研究機関 | 法政大学 |
研究代表者 |
坂爪 洋美 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (10329021)
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研究分担者 |
島貫 智行 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (40454251)
松浦 民恵 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (60570778)
武石 惠美子 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70361631)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ダイバーシティ / 管理職 / リーダーシップ |
研究実績の概要 |
多様な部下を持つ管理職に求められるマネジメント行動の明確化を目的として、2019年8月から9月にかけて、ドイツもしくはスイスに本籍を置くグローバル企業に勤める課長クラス12名を対象にインタビュー調査を実施した。インタビュー調査の分析を通じて、明らかになったのは以下の3点である。 第1に、インタビュー対象の管理職は部下の性別や年齢といった表層的ダイバーシティだけでなく、部下の性格や価値観といった深層的ダイバーシティにも注目していた。また、彼らは性別や価値観といった関係志向属性だけでなく、能力やスキルといったタスク志向属性にも注目していた。 第2に、インタビュー対象の管理職の行動は、インクルーシブ・リーダシップに該当することが確認された。また、多様な部下に個別に対応するという、「分化」に該当するコミュニケーションと同時に、部門目標に加えて管理職自身に対する理解を深めることを目的とする、「統合」を意識したコミュニケーションを行っていることも確認された。「分化」を推進する行動が取られれば取られる程、同時に「統合」を高める行動が求められ、両者が揃うことで初めて、部下の満足度と部門のパフォーマンスが共に高まると考えることができる。多様な部下をマネジメントする管理職の行動に言及する際、ともすれば多様な部下それぞれに適合する行動を取るという「分化」に該当する行動に目が行きがちであるが、本研究の知見は、多様な部下の「統合」に向けた管理職の行動とその広がりに目を向ける必要があることを示す。 第3に、インタビュー対象の管理職は部下を採用する時点から部下の多様性を意識していた。多様な部下を持つ管理職の行動をリーダーシップという観点から捉える時、採用活動は見過ごされがちだが、多様な部下のマネジメントに際しては、部下の多様性の程度ならびに構成を決める採用行動が、管理職にとって非常に重要だと言える。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ダイバーシティ・マネジメントを担う管理職に関する先行研究のレビューは、ほぼ完了した。また、2019年度に予定していた海外企業に勤務する管理職へのインタビュー調査も予定通り実施し、分析まで終了した。既に紀要論文への投稿を終え、2020年度の学会報告についても申し込み済みである。さらに両者の結果をふまえ、2020年度に実施予定のアンケート調査の設計にも既に着手している。
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今後の研究の推進方策 |
2020年度は、先行研究のレビューの結果、ならびに2019年度に実施した海外企業に勤務する管理職に対するインタビュー調査の結果を踏まえ、日本企業を対象として、ダイバーシティ・マネジメントに関するアンケート調査を実施する予定である。また、状況的に可能であれば、同一項目で海外でも管理職ならびに一般社員を対象としたアンケート調査を実施する予定である。 日本企業を対象としたアンケート調査では、①企業の人事部を対象として、ダイバーシティ・マネジメントを中心に人事制度に関する調査、②同企業に勤務する管理職を対象として、人事制度の認知ならびに自らの部下マネジメント行動に関する調査、③同企業に勤務する役職につかない一般社員を対象として、上司のリーダーシップ行動を中心とする部下マネジメント行動ならびに自らの職務関連行動・態度に関する調査、を予定している。 これらの調査を通じて、多様な部下をマネジメントする管理職の行動の実態ならびに望ましい行動を明らかにすると同時に、管理職から望ましい行動を引き出す上で必要な人材マネジメントのあり方を整理する。 上記調査とは別に、2018年度に実施したダイバーシティ・マネジメントに関する企業調査の結果に財務諸表の結果を関連づけた分析を行うことを通じて、ダイバーシティ・マネジメントの企業レベルでの成果を検証する。
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