研究課題/領域番号 |
18H00903
|
研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
倉田 久 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20508428)
|
研究分担者 |
上市 秀雄 筑波大学, システム情報系, 准教授 (20334534)
岡田 幸彦 筑波大学, システム情報系, 准教授 (80432053)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 情報の価値 / 店舗サービス / RFID / 顧客の多様性 / サービスの過飽和 / 小売 |
研究実績の概要 |
2019年度は計3年間の研究プロジェクト期間の2年目であり、初年度の活動を基盤として、本研究の主題である小売現場における情報の価値に関するモデル化研究を発展させた。 具体的には2018年度の成果である研究代表者によるJournal of Retailing and Consumer Services誌の掲載論文の研究テーマでもあった「サービスに過飽和する顧客が存在する状況下での顧客特性の情報を得ることの価値」、そして「情報取得ためにRFID等の技術に投資する経営的意義」の研究の発展に注力した。具体的には、直接的な研究発展として、接客サービスがもたらす負の影響(顧客満足の過飽和)と正の影響(製品品質に対する不確定性の解消)のトレードオフの分析や、顧客タイプの設定をShowroomingなどOmnichannel戦略の問題に関連付ける問題に取り組んだ。同時に間接的な発展として、Supply chain coordinationの視点からの分析を試みたり、Price-matchingや販売時期の時間差を考慮する2期間モデルの構築など、小売業やサービス業の今日的な課題の研究も進めた。これら間接的研究活動は2020年度に主題研究と結合させる予定であり、その準備を行った。 全般として研究は順調に進んでいる。一つの懸念は新型コロナウイルス蔓延による学術大会の中止が2020年2月以降に発生したことであるが、それ以外に当初の計画からの大きな変更はなかった。なお本プロジェクトの本年度の成果物としては下記に示すように、学会Proceedings論文誌への掲載が6本、学会発表が5件となっている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下の事実より、本研究は特に大きな問題もなくおおむね順調に進展していると判断する。 (1)研究実績の概要で示したように学会論文誌への掲載が6本、学会発表が5件という実績は商学分野の理論研究においては十分な分量だと理解する。 (2)2020年以降、新型コロナウイルスの世界的なパンデミックが発生し、多くの学術活動を含む経済活動が中止や制限に追い込まれている事実がある。ただし、本研究は数理モデルや数値計算を用いる理論研究であるので、実証研究や事例研究と異なり社会活動の停滞が当研究の諸活動への影響が少ないこと、またネットを通した研究情報のやり取りを関係者との間で進めていることから新型コロナウイルス問題対しても適切な対応できたと判断する。 (3)当初計画していたRFIDを用いた顧客動線の把握と顧客情報の価値を結びつける研究案に加え、ShowroomingやWebroomingなどのOmnichannel戦略下での顧客行動、サプライチェーン契約によるサプライチェーンのシステム全体最適問題、Price-matchingなどの販売戦略、2時点間の動的モデルへの発展など新たな研究課題のモデル化研究をも並行して取り組んでいる。最終年度にはこれらを統合し最終的なモデル完成を目指す基盤ができた。研究を進めていく中で新たな課題、新規な着眼点が見つかり、研究成果をより充実させうる可能性が発見できた。
|
今後の研究の推進方策 |
2020年度は本研究プロジェクト総括をするべき最終年度であり、RFIDなど技術の小売店舗の導入が、顧客のサービス選好という情報の価値の把握に見合うのかという経営問題に解答を提示したい。具体的には、実績の概要の部分で説明したようにOmnichannel、サプライチェーン契約、Price-matchingなどの小売戦略のモデル化分析も進めており、それをJournal of Retailing and Consumer Services誌掲載論文の研究にも用いた数理モデル分析に加味することで、今までの商学、経営工学、経営情報学には無かった学際的なモデル分析を完成させる。そのうえで研究結果を学術と実務の視点から評価してもらい、フィードバックからの適宜修正を加えたうえで、学術、ビジネス、そして教育の3視点から研究成果を社会発信したい。 前述のとおり現時点での懸念は新型コロナウイルス蔓延による様々な学会活動の中止という事態である。現時点で当初の研究計画に組み込んでいた米国での国際会議の開催が中止されてしまった。研究者活動に様々な制約が掛かっている現状であるが、可能な範囲内での研究発信を進める予定である。 具体的には、学術大会発表の代わりにホームページでの発信など可能な手段を用いた研究成果の社会発信を試みたい。また、研究成果は教育や研修の形でも社会への還元をめざす。当初の計画にはなかったネットベースの社会発信と社会還元を試してみることも2020年度の方針となる。
|