研究課題
本プロジェクト研究は、農業と食品産業におけるイノベーションを類型化しつつ、持続可能なビジネスモデルを理論的に説明できる枠組みを構築することである。2年目も、3つの研究テーマについて取り組んだ。①海外の理論実証研究については、小川(研究主査)と青木(研究協力者)がオランダを訪問し、アムステルダム自由大学のエイキング博士(Dr. Harry Aiking)にインタビューを試みた。その成果は、調査資料として『イノベーション・マネジメント研究』(法政大学)で刊行されている。内容は、植物食(Plant-based Food)が環境汚染や気球温暖化を防止する役割について論じたものである。さらに、小川は単独で、カリフォルニアの食文化の変遷に関する実態調査を敢行した。また、わさびを中心に植物の育種を研究している山根は引き続き、国内外の学会誌にわさびに関する研究論文を発表している。②持続可能な食ビジネスの事例研究:隔月のペースで、持続可能な農と食のビジネスに取り組んでいるイノベーティブな企業組織を取り上げる「NOAFセミナー」を実施した(全4回、学外で1回)。セミナーと関連して実施した経営者へのヒアリングをもとに、小川はその成果を専門誌(食品商業)に連載した(10回)。上田は、美味しさを生み出す情報の実証研究、沖縄と能登で地域創生プロジェクトを支援した事例を報告して論文に残した。③研究チームの共通テーマである「ビーガン/べジタリアンの消費行動研究」では、西尾が大学院生と共同論文を発表している。なお、研究対象として主たる企業は、今年度は以下のようになる。(A)農業分野(ローソンファーム千葉、ローソンファーム兵庫、植物工場・サラ)、(B)卸会社(坂ノ途中)、(C)食品小売業(オイシックス・ラ・大地)、(D)食品加工業と地域の取り組み(ロック・フィールド、吉見光の子こども園)など。
1: 当初の計画以上に進展している
今年度(2019年度)は、3つの課題に取り組む計画になっていた。①海外の研究者と企業訪問については、オランダ自由大学のエイキング博士をインタビューして大きな進展をみた。米国西海岸の視察取材(惣菜メーカーのロック・フィールドの研究支援)では、米国人の食生活の変化の背後にある健康志向について、食材供給側(サラダ専門店やファストフード店)の経営形態の変化について示唆を多く得た。後者は、当初予定されていない海外調査だった。しかも、その成果は予想以上に大きかったことが研究を進展させた。②国内での事例研究(10事例)とセミナー開催(全5回)に関しては、ほぼ想定していた成果を上げることができた。持続可能な食ビジネスの事例研究は、隔月のペースで持続可能な農と食のビジネスに取り組んでいる革新的な企業群を取り上げた(全5回)。③ESG投資の有効性を確認するための仮説群の構築については、コンビニ(大手3社)のデータで検証を試みが、因果関係を十分に検証することができなかった。残念ながら、データの不備というより、仮説そのものを再検討する必要があるかもしれない。
2020年度においても、3つの分野の課題研究に取り組むことを予定している。①基礎研究:農学と食品産業における先端的な研究の整理、海外の実証研究のデータ収集、持続可能なフードビジネスモデルの理論枠組み作り。②定量調査:JCSIの流通サービス小売業 (A)CSR指標と生産性の関係(400社10年分のJCSIデータベースを活用)の定量分析の実施、(B)CSRの実態調査(雑誌 『オルタナ』の事例データベースの分析、今年度は初めて)。③持続可能なフードビジネスの事例研究:国内では引き続き、隔月で「NOAFセミナー」を実施する(新型コロナで前期のセミナーは中断の見込み)。なお、海外現地調査は米国(西海岸)を前倒しで実施済み。とりわけ、新型コロナの影響で、当初に3年目に予定していた現地調査は実施が困難と考えられる。そこで、国内企業を中心に地方での調査を中心に推進する予定である。実証研究で対象とする企業のリストは以下の通り。企業群には、その後にサーチした企業を加えていく。(A)農業分野(イオンアグリ創造、ドイツの植物工場・インファーム日本法人)、(B)卸会社、中間取引プラットフォーム事業(FarmO)、(C)食品小売業の実態調査(物語コーポレーション、福島屋、ヤオコー)、(D)食品加工業と地域の取り組み(相模屋食料、クリマ・氷室豚)、(E)海外視察調査(ドイツを中心に欧州、キャンセルの可能性もあり)。
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (20件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 6件) 図書 (1件)
食品商業
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