研究課題/領域番号 |
18H00911
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
伊藤 邦雄 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 特任教授 (60134889)
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研究分担者 |
中野 誠 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (00275017)
田中 優希 法政大学, 経済学部, 准教授 (00636178)
伊藤 健顕 甲南大学, マネジメント創造学部, 准教授 (00709496)
中條 祐介 横浜市立大学, 国際商学部, 教授 (40244503)
金 鉉玉 東京経済大学, 経営学部, 教授 (40547270)
鈴木 智大 亜細亜大学, 経営学部, 准教授 (50609021)
河内山 拓磨 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (70733301)
加賀谷 哲之 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (80323913)
野間 幹晴 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (80347286)
円谷 昭一 一橋大学, 大学院経営管理研究科, 准教授 (90432054)
米谷 健司 立教大学, 経済学部, 准教授 (90432731)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ディスクロージャー / 非財務情報 / 統合報告 / コーポレートガバナンス / 企業価値創造 |
研究実績の概要 |
本研究課題の目的は,企業の開示情報のなかで,特に企業経営者と投資家との重要なやり取りやその結果が公表されると想定される媒体にフォーカスをあて,非財務情報をいかに企業評価や情報開示に活用するかについて検討することにある。とりわけ,決算説明会,対話・エンゲージメント・プロセス,有価証券報告書や統合報告書などを検討対象に,関係者に対するインタビュー調査やアンケート調査およびアーカイバルデータを用いた実証分析などを通じて非財務情報の重要性に関する分析を進めている。 令和元年度では,前年度までに得られた知見を参考に,(1)主要業績因子,(2)マネジメント・プロセス,(3)社外からの規律付けという3つの観点から非財務情報の重要性について検討を進めた。とりわけ,前年度に実施した企業担当者向けアンケート調査などからは,日本企業において資本コストやコーポレートガバナンスに対する意識が高まっていること,さらには,近年,注目が寄せられている持続可能な開発目標(SDGs)や気候変動関連財務情報(TCFD)に関する開示が強化され始めていることが観察された。これらの観察された意識変化に対して,令和元年度では研究課題内で設定された各分科会において研究が進められ,日本企業におけるSDGsやTCFDに関する開示実態やその課題,投資家による規律付けの実態と影響,コーポレートガバナンス改革に伴う企業組織の変容とその帰結などについて研究を進展させてきた。この結果,前年度に引き続き,公表論文および学会報告の双方において研究成果を蓄積することができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2年目となる令和元年度は,日本企業が開示する非財務情報について,上記に掲げた(1)主要業績因子,(2)マネジメント・プロセスおよび(3)社外からの規律付けという3つの観点から検討し,どのような内容の情報がどういった目的のもと開示されているのか,また,開示される非財務情報がどのような影響を持ち得るのかについて研究を進めた。その結果,論文執筆と学会報告の双方において一定の研究成果を蓄積できており,当初の研究計画に準じた進捗であると考えている。 また,前年度に引き続き,令和元年度においても研究課題に関連する情報ならびに実務家の意識変化に関する認識をアップデートすることを目的に,先行研究の収集および企業担当者や投資家への定期的なインタビュー調査を実施してきた。これらの活動は研究活動を進めるうえでの問題意識をより明確なものにすると同時に,翌年度以降の研究活動を円滑にするうえでの重要な基盤になると考えており,この意味でも研究進捗は概ね順調であると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる令和2年度においては,大きく3つのことを実施する予定にある。第1に,当初の研究計画にもとづき,投資家あるいは証券アナリストといった資本市場参加者を対象としたアンケート調査の実施である。研究初年度に実施した企業担当者向けのアンケート調査では非財務情報に対する企業サイドの認識を解明することに成功したが,一方で,資本市場参加者が非財務情報をどのように投資判断あるいは投資推奨判断に利用しているかについては包括的な証拠が得られていない。資本市場参加者向けのアンケートを早急に実施することで,こうした点を補完し,本研究課題に関してより包括的な知見を得る。 第2に,各分科会における研究活動の推進である。上記に掲げた3つの観点から非財務情報の重要性に関する検討を引き続き進め,日本企業におけるディスクロージャー実務の実態と影響を解明することに努めていく。とりわけ,テキストマイニングなどの手法のもと定性的な情報や概念を定量化したうえで実証研究を行うことを試みる。 第3に,令和2年度が最終年度となることから,研究分科会について横断的な研究成果の統合や全体としての示唆の共有などについての取り組みを実施する。具体的には,研究分科会横断の全体会議を開催し,得られた知見を共有・議論する機会を増大させていくほか,研究成果を統合した報告書や書籍を作成するなど,全体としての成果を意識した活動を進展させていく。
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