研究課題/領域番号 |
18H00914
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
鈴木 智英 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (50813648)
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研究分担者 |
西條 辰義 高知工科大学, 経済・マネジメント学群, 特任教授 (20205628)
國部 克彦 神戸大学, 経営学研究科, 教授 (70225407)
大鹿 智基 早稲田大学, 商学学術院, 教授 (90329160)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 成熟経済社会 / ナッジとしてのアカウンティング / 付加価値分配計算書 / DS経営モデル / 新しい資本主義 / 分配政策 / コーポレートガバナンス / ディスクロージャー |
研究実績の概要 |
社会構築主義会計や制度設計経済学は、望ましく新たな経済現象・制度を創造する条件や過程の解明に努める。例えば2013年にインドで法制化された One Additional Line (OAL) は損益計算書にCSR費用を追加的に1行表示させるだけで、経営者、投資家、メディアのインセンティブを自律的に統制し、市場原理としてよりサステナブルな経済発展が達成される可能性を示した。これはメカニズムデザインと実験経済学を援用した斬新で効果・効率的な政策イノベーションとして国際的な注目を集めつつあるが、その政治的センシティビティの為に公開には至らず学術的研究は今後の幅広い学際的な吟味に委ねられていた。本研究はこのような新しい発想の会計を社会哲学、フューチャー・デザイン、環境・サステナビリティ会計および現行諸制度の中で検討し、実効性ある全球的な持続的発展のためのナッジとして構築する可能性を探求する目的であった。しかし、2020年1月以降のコロナ禍の影響で、当初予定していた国内・国外の実証的な実験は不能となったため、新たに国内上場会社の有価証券情報をベースとする、被験者を使ったシミュレーション実験(DSシミュレーター)を開発した。2021年、基本的データの蓄積と分析をもとに、の公益社団法人 関西経済連合会 委託研究『成熟経済・社会の持続可能な発展のためのディスクロージャー・企業統治・市場に関する研究調査報告書 <四半期毎の開示制度の批判的検討を契機とする>』を公表し、さらに上場企業トップや会計士、金融庁・経済産業省職員らと検討を進め、実装へ向けて研究を推進している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究は、課題番号18K18585挑戦的研究(萌芽)「Accountics: 成長後経済のサステナビリティのための会計・統計の再構築」の進捗著しく、当研究課題との協働が可能となった。
公益社団法人 関西経済連合会 委託研究『成熟経済・社会の持続可能な発展のためのディスクロージャー・企業統治・市場に関する研究調査報告書 <四半期毎の開示制度の批判的検討を契機とする>』の公表以降、ここでの発見・示唆が岸田政権の『新しい資本主義』政策に影響を及ぼしており、政権幹部らとの協働が進んでいる。当初実験的、理論的試みであった研究が、応用研究・実装研究へと発展している。
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今後の研究の推進方策 |
『成熟経済・社会の持続可能な発展のためのディスクロージャー・企業統治・市場に関する研究調査報告書 <四半期毎の開示制度の批判的検討を契機とする>』にある、付加価値分配計算書 Distribution Statement を中心とする DS経営経済モデルを精緻化し、『新しい資本主義のアカウンティング;「利益」という成熟経済社会のアポリア』の出版を目指し、さらにその国際化、英文科を志す。現在は新興国である中国やインドも25年後には成熟経済社会化を迎える。中国の政府に近い人民大学、インドの企業省下のIndian Institute of Corporate Affairsとの共同でデータを入手、検討を加え、英文の図書を発表する予定である。
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