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2019 年度 実績報告書

統合報告と管理会計の相互的影響に関する多面的研究

研究課題

研究課題/領域番号 18H00915
研究機関早稲田大学

研究代表者

伊藤 嘉博  早稲田大学, 商学学術院, 教授 (10168388)

研究分担者 大森 明  横浜国立大学, 大学院国際社会科学研究院, 教授 (00340141)
山本 浩二  大阪学院大学, 経営学部, 教授 (20166797)
尾畑 裕  一橋大学, 大学院経営管理研究科, 教授 (20194623)
横田 絵理  慶應義塾大学, 商学部(三田), 教授 (20277700)
伊藤 和憲  専修大学, 商学部, 教授 (40176326)
目時 壮浩  武蔵大学, 経済学部, 准教授 (90548851)
研究期間 (年度) 2018-04-01 – 2021-03-31
キーワード統合報告 / 統合思考 / 統合型経営 / BSC / 戦略マップ
研究実績の概要

統合報告が管理会計実践ならびに研究に及ぼす影響には、能動的な側面と受動的な側面の2つがある。このうち、昨年度は受動的な影響の分析を中心として調査研究を実施したが、本年度は能動的影響に的を絞って研究活動を行った。この能動的影響とは、統合報告が目的とする企業の長期的な価値創造(プロセス)とその影響の伝達に関連して、管理会計システムに期待される貢献をベースとしている。
具体的には、バランスト・スコアカード(BSC)ないし戦略マップといった既存の管理会計ツールが統合報告の推進を支援する強力な手段となりうると考え、その可能性と課題について分析・検討を行った。事実、内外を問わず、相当数の統合報告実践企業がBSCないし戦略マップを、自社の戦略を投資家に説明する際の枠組みとして活用している。われわれは、そうした企業に積極的にインタビュー調査を実施してきたが、本来は内部管理、わけても戦略マネジメントのツールであるそれらを外部報告に活用するには自ずと限界がある。なによりも、極秘事項である自社の戦略を外部にさらけ出すことにつながるため、ぼかしやアレンジが多岐にわたって施され、その結果外部からは戦略とその実践プロセスとの有機的なつながりが読みにくくなっているのが現状である。そのことは、内部管理のツールとしてのBSCないし戦略マップそのものに対する評価にも、少なからずマイナスの影響を及ぼしているという事実を、先の調査を通じて確信した次第である。これにより、総合的にみれば、管理会計スステムが統合報告の推進に向けて果たすと期待される能動的な影響は、表見的にはともかく、本質的な意味においては、さほど期待できないとの印象を持つに至った。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

前年度に引き続き、先行研究のレビューや日本企業へのインタビュー調査を積極的に行ってきた。他方で、前年度に予定しながら、現地の治安悪化により断念した南アフリカ共和国への調査を再度試みたが、現地の治安状態がその後もさほど改善が見られないことから、インドおよび、ベトナム、ミャンマーへの代替調査を企画した。ただし、折しも新型コロナウイルスの感染が世界的に拡大する中、各大学より海外渡航の自粛を要請される事態となり、これらの海外調査を断念せざるを得なかった。これにより、本年度調査の中心に位置づけていた海外調査をことごとく断念せざるをえなくなり、研究の遅延を余儀なくされた。

今後の研究の推進方策

前述のように、本年度は管理会計システムが統合報告の進展に寄与する能動的な役割に注目して研究を行った。その結果、未だわが国では当該影響に関する確固たる兆候を確認することはできなかった。それでも、統合報告がきっかけとなり、内部管理の様相が大きく変わりつつあることを感じ取ることはできた。実は、そこでもBSCおよび戦略マップが少なからず関連することから、今後はやや視点を変えて、先の能動的な影響を別の角度からさらに深く掘り下げていきたいと考えている。
すなわち、統合報告が企業内部における戦略および意思決定に変容を促し、そのことを通じて管理会計システムの変革につながるという側面に的を絞って研究調査を続けたいと考えている。これは、ある意味ではむしろ受動的間接的影響といえるかもしれないが、巡りめぐって、管理会計それ自身が統合報告のあり方に革新をもたらす能動的影響につながるものとわれわては考えている。この点について付言するなら、現在統合報告書を開示している企業の多くが、ビジネスモデルの表現方法や非財務情報のKPI(key performance indicators)化に苦慮しており、その結果として投資家が本当に求めている情報を十分に提供できているのかどうか疑心暗鬼に陥っているとされる。いうまでもなく、統合報告は戦略の実践プロセスの開示を求めており、かつ組織内部での経営情報の共有の手段としても注目されていることから、上記の能動的影響を最大限に引き出すことが、まさに管理会計システムに求められているのである。同時に、こうした点に着目することにより、単に統合報告に限らず、従来は関連が薄いと認識されてきた外部報告が企業内部の戦略策定、経営意思決定さらにはマンジメントコントロールに及ぼす多面的な影響とその結果としての企業業績の変容について明らかにできるものと考えている。

  • 研究成果

    (3件)

すべて 2020 2019

すべて 雑誌論文 (3件)

  • [雑誌論文] 統合報告のマネジメントへの活用―X社の事例からの考察―2020

    • 著者名/発表者名
      目時壮浩・横田絵理
    • 雑誌名

      慶應義塾大学商学会DISCUSSION PAPER SERIES FY19

      巻: 2 ページ: 1-7

  • [雑誌論文] 統合報告書における結合性の検討2019

    • 著者名/発表者名
      伊藤和憲
    • 雑誌名

      専修商学論集

      巻: 108 ページ: 1-14

  • [雑誌論文] 統合報告時代におけるサステナビリティ報告のあり方-TCFD勧告に基づく情報開示から-2019

    • 著者名/発表者名
      大森 明
    • 雑誌名

      Disclosure & IR

      巻: 12 ページ: 103-110

URL: 

公開日: 2021-01-27  

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