今日のわが国は、労働人口が減少するなかで、労働生産性を高めることが喫緊の課題となっている。第4次産業革命とよばれるIoT、ビッグデータ、および人工知能(AI)による技術革新の進展が新たな産業や雇用を創出すると期待される一方で、ホワイトカラーによる単純労働の大部分について,ITによる代替可能性が指摘されている。この研究プロジェクトは①現在、企業の経理担当者及び職業会計人が行っている仕事を、AIへの代替性の観点から分類し、近未来の技術水準において、AIが人間の労働に代替可能な領域と代替すべき領域との識別を行うこと、②①で行った考察に基づいて、今後、大学・会計専門職業学校等に求められるべき会計教育モデルおよび現在の会計教育の改善点を検討することを目標としている。①についてはコロナ禍前の2018年、会計分野においてAI化の最先端を走っていた中国上海の4大監査法人でインタビューを行ない、そしてコロナ禍が収束した2023年3月には国立台湾大学のスタッフとの意見交換や、世界有数の半導体メーカーであるTSMCを訪問することで多くの知見を得た。また②の会計教育については今後の主要な対象が財務諸表作成者から財務諸表利用者に移行することを前提に、データサイエンティス教育との連携や、従来の簿記教育の再評価とを行う必要がある。 さらに研究分担者の徳賀芳弘は当科研グループの研活動の一環として日本学術会議・経営学委員会・「AI・IT等の普及による経営実践・経営学・経営学教育への影響を検討する分科会」(代表: 原良憲京都大学教授)において、本科研のテーマに関する研究会(毎月一度)に参加し、報告も行った。それらの成果は、2023年6月4日に、早稲田大学において公表される予定である(シンポジウムのタイトル: 「会計・監査・税務領域におけるAI・IT・DXの普及と課題」)。
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