研究課題
最終年度となった今年度は、前年度の議論を引き継ぎ,主に2つの観点からの研究を進めた。1つは、気候危機とサステナビリティというレジームがもたらしている新たな技術革新・産業再編にともなう跡地再生空間のガバナンスの変容、もう1つは、こうしたガバナンスにおいて、公共空間というものの概念形成も進むと共に、どのような合意形成が必要かについて、主に再生可能エネルギーの社会実験や国内外の事例を参照しながら研究を進めた。前者については、とりわけ沿岸域においては、ブルーカーボンエコノミーがグローバルに展開すると同時に、海上養殖のみならず、陸上養殖というあたらしい産業形態が、異業種の参入により、過疎地域および冬眠状態になっていたかつての産業・開発跡地に広がっていることが確認された。後者については、サステナビリティ・レジームのもとでの旧産業の跡地開発における地域のアイデンティティやそれを体現するフードスケープなど社会文化的な蓄積とシンボル形成過程の尊重や、旧産業から新産業への産業移転・労働力移転の社会経済的サポートの手厚さ、地域社会における透明性の高い事業設計プロセスなどが、社会的な合意形成がいかに進められるかにとって極めて重要であることが明らかになった。同時に、こうしたプロセスについては、とりわけステイクホルダー形成時から、「誰のためのどのような社会正義のもとにあるか」を念頭に、その問題がいかなる問題なのかそれ自体を共有するプロセスが重要であることも明らかとなった。気候正義や環境正義において、複数の多元的な正義が競合する状況においては、あえて善の構想をめぐる多元性にまで踏み込み、政策決定の手前の価値を共有するためのアリーナ、とりわけ人びとがそれまで言語化してこなかった社会史や社会的行為と共にある「価値」について、人びとのあいだで言語化していくことが重要であることも明確になった。
令和3年度が最終年度であるため、記入しない。
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社会志林
巻: 69(4) ページ: 43-60
現代思想
巻: 50(2) ページ: 174-187
巻: 50(7) ページ: 21-33
保全生態学研究
巻: advpub ページ: 1-5
10.18960/hozen.1919