研究課題/領域番号 |
18H00924
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
河村 則行 名古屋大学, 環境学研究科, 准教授 (30234131)
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研究分担者 |
成 元哲 中京大学, 現代社会学部, 教授 (20319221)
松谷 満 中京大学, 現代社会学部, 准教授 (30398028)
木田 勇輔 椙山女学園大学, 文化情報学部, 准教授 (70760734)
丹辺 宣彦 名古屋大学, 環境学研究科, 教授 (90212125)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 名古屋都市圏 / 社会地図 / 近隣効果 / 集合的効力感 / ウェルビーイング |
研究実績の概要 |
昨年度は、近隣効果論、集合的効力感(R.J.サンプソン)の理論を参照にして、名古屋市を対象に、人口増減・階層構成等にもとづき地域類型を設定して50の小学校区を選び、大規模な質問紙調査を実施し、住民の社会的ネットワーク、地域活動の参加、孤立度、生活満足度などのデータを収集し、データセットを構築した。そのデータセットに基づいて、研究分担者である木田勇輔、成元哲が論文「なぜ居住地域の社会環境が重要か―「孤独の集積」と住民のウェルビーイング―」を執筆した。そこでは、近隣効果として、不利の集積度の高い地区に居住することは主観的健康観を悪化させる傾向があることが明らかになり、「孤独の集積」が主観的健康観のようなウェルビーイングを引き下げている可能性があることが示唆された。事例研究として、不利な集積が進んでいるが集合的効力が高いとされる地区として名古屋市南区名南学区をとりあげ、そこでの高齢者の社会的孤立などの問題に取り組んでいるまちづくり活動を分析した。そこでは、フォーマルなサービス(制度にもとづく活動)とインフォーマルなサービス(住民の自発的な活動)をつなぐことが重要であることが示唆された。また、前年度に続き、GISにより名古屋都市圏の社会地図を作成し、不利な集積が進んでいる地域を特定化した。こうして、これまで比較的安定的であるとされていた名古屋市においても、社会的孤立や孤独が問題になっていること、それへの対策・介入が重要であることが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
質問調査で調査対象地区として選んだ小学校区(50学区)を中心に、そこで活動している地域団体(学区連絡協議会)・NPOに対して、ヒアリング調査を実施し、小学校区の地域イベントの活動などのデータを収集する予定であったが、コロナ禍でインタビュー調査ができなかった。その代わりに名古屋市区役所の地域力推進室のヒアリングを行い、各区の地域住民組織である学区連絡協議会の概況についてデータを収集した。
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今後の研究の推進方策 |
実施した質問紙調査の名古屋データにもとづき、さらにデータ分析を進め、「不利の集積」などの近隣効果や集合的効力感(自発的に協力しようとする住民の意思)の効果を検証し、学会報告や論文執筆を行う。また名古屋市の学区へのインテンシブな調査を実施し、学区レベルの集合的効力感の差異とそれを規定する要因を抽出する。最終的には、名古屋都市圏の「見えない格差」と地域の持続可能性をテーマとする本を出版する。
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