研究課題/領域番号 |
18H00929
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研究機関 | 千葉商科大学 |
研究代表者 |
荒川 敏彦 千葉商科大学, 商経学部, 教授 (70534254)
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研究分担者 |
宇都宮 京子 東洋大学, 人間科学総合研究所, 客員研究員 (90266990)
北條 英勝 武蔵野大学, 人間科学部, 教授 (20308042)
高橋 典史 東洋大学, 社会学部, 教授 (50633517)
下村 育世 一橋大学, 大学院社会学研究科, 特任講師(ジュニアフェロー) (00723173)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 生活意識 / 仏壇・神棚 / 墓参 / 運命 / 易占 / 生活満足度 / コーホート |
研究実績の概要 |
2021年度は、2020年に実施した調査データについて「墓参」や「神棚所持」「仏壇所持」等、各研究メンバーがそれぞれの分担に基づいて分析した研究会をくり返し実施するとともに、呪術研究およびスピリチュアリティ研究に関する現在の動向について研究会を実施し、研究のとりまとめに向けてプロジェクトの分析視角について討議した。 一例として墓参について見れば、それが供養とは異なる意味をもち、現世利益的な祈願の機会であることが確認される。現代、代行サービスを利用してでも墓参を欠かすまいとする心性や、伝統的な墓参の時期としての盆や彼岸についてネットで調べられている状況は、墓参が伝統として継続される一方で、内実が変容している様子を示唆する。墓参は教団との関わりで習慣づけられているものではなく、「伝統」として観念されている行為をくり返すことで家族やメディアなどの影響を受けつつ習慣化した文化的実践と言える。 墓参での祈願について、2006年に本研究会が行った調査結果と2020年の調査結果とを経年比較してみると、世代ごとの祈願行為は14年間で減少する傾向にある(加齢効果の点では祈願減少)のに対して、2006年と2020年の同一年代を比較した場合には祈願行為が増加する傾向を確認できた(時代効果の点では祈願増加)。この結果から、時代を超えて伝統的になされているかに見える墓参での祈願行為が、各自年を経ると実施されなくなる一方で、時代によって増減する実態を窺うことができる。 墓参の実践は、日常から区別される非日常世界に現世利益という日常の思いを持ち込みながら、日常と非日常とを融合させる場を構成している。一定の共同性において形成された「伝統」として観念され実践される行為が周期的に反復されることで、それが不変的で安定して継承されているように見える秩序化について、その内的構造の一端を解明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
各研究メンバーがそれぞれデータの分析を進め、研究会で検討しながら最終的なとりまとめに向けた具体的な作業を進めてきていることにより、当該評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度内に本プロジェクトの研究成果を報告書にまとめることを目指し、各共同研究者が各自の分担について分析を進め、それを持ち寄って討議する研究会をくり返し実施する。新型コロナウィルスの感染状況は予断を許さないものではあるが、次第に大学における対面での会議も増えつつあり、状況を観察しながら対面での研究会を開催し、最終的なとりまとめに向けて研究を積極的に進めていく予定である。なお、研究成果報告書が完成した後は、その内容をもとに一書に纏め出版する可能性を探り、研究成果を広く社会に還元することを目指す。
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