研究課題/領域番号 |
18H00931
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
竹ノ下 弘久 慶應義塾大学, 法学部(三田), 教授 (10402231)
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研究分担者 |
森山 智彦 下関市立大学, 経済学部, 特任教員 (00547903)
長松 奈美江 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (30506316)
阪口 祐介 桃山学院大学, 社会学部, 准教授 (50589190)
石田 賢示 東京大学, 社会科学研究所, 准教授 (60734647)
佐藤 嘉倫 東北大学, 文学研究科, 教授 (90196288)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 不平等 / ジェンダー / 外国人 / 家族 / 労働市場 |
研究実績の概要 |
本研究は、階級・ジェンダー・エスニシティの相互関係から、欧米やアジア諸国で提示される階層研究の知見との比較検討を行い、新たな理論枠組みの導出を目指すことを目的としている。実証研究では、大規模公的統計と小規模なミクロデータの双方を活用することで、家族と労働市場の中で生じる不平等形成メカニズムを明らかにすることを重視する。昨年度は、研究プロジェクトの初年度であり、研究プロジェクトを進展させるための様々な準備を行った。第1に、大規模公的統計の申請作業を総務省統計局に対して行った。申請には、様々な書類や研究計画、使用する指標や変数のリストを提出する必要から、多くの時間を要した。最終的には、国勢調査と就業構造基本調査ともに、2019年の2月はじめに申請作業を終え、データセットを入手することができた。理論的な検討の部分では、先行研究の検討を行った。あわせて、近年のアジア諸国における不平等の動向を把握するため、海外共同研究者であるKwang-Yeong Shin中央大学校教授と、Chin-fen Chang台湾中央研究院の研究員のお2人をお招きして、国際シンポジウムを慶應義塾大学三田キャンパスにて、2018年11月に行った。このシンポジウムを通じて、アジアの不平等研究の動向を把握することができ、アジア諸国を中心とする階層、不平等理論の再構成に多くの示唆を得ることができた。シンポジウムと合わせて、小規模な研究会を2回行った。ひとつは、海外共同研究者であるマルメ大学の長南さや佳氏の来日に合わせて、スウェーデンにおける移民の統合政策と不平等の動向について検討する研究会を行った。いまひとつは、統計方法論を検討するため、近年の機械学習、深層学習の発展について、民間企業でデータサイエンティストとして活躍されている浅見正洋氏をお招きしての研究会を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究プロジェクトの初年度は、本研究申請時にまとめた研究計画通りに、研究を進展させることができた。本研究は、公的統計のミクロデータを分析に活用することを重視している。代表者は、以前の科研費プロジェクトでも、国勢調査をはじめとする公的統計を研究に用いており、データの利用申請に多くの時間を要することは理解していた。研究の初年度に、データの利用申請を完了し、データを入手することができた。2018年度は、全体会合を2回開催した。第1回目は、4年間の研究をどのように進めていくのかを確認するとともに、公的統計を本研究プロジェクトでどのように活用するのかも検討を行った。第2回目の会合の1日目では、韓国・台湾の研究者をお招きして、不平等に関する国際シンポジウムを行った。そのことで、アジア諸国の近年の不平等の動向やそのために必要な理論の再構成について、多くの示唆を得ることができた。2回の全体会合とは別に、小規模な研究会を2回行った。ひとつは、海外共同研究者である長南さや佳氏を招いての研究会と、統計分析の方法論については、機械学習、深層学習の数学的な考え方と社会科学における応用について検討する研究会を、浅見正洋氏をお招きして行った。様々な文献を通じて、先行研究の検討を行い、その検討結果は、2回の全体会合の中で、他のメンバーと共有した。以上から、2018年度は、当初の計画通り、研究を進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、利用申請を行った公的統計データの整備を行い、分析に着手したいと考えている。就業構造基本調査は、6時点にまたがるデータの利用申請を行ったため、そのデータの分析やデータを用いた不平等の時系列比較を進めるためには、データの統合と整備が不可欠である。その作業を本研究会のメンバーである森山智彦氏を中心に行う。その作業のための会合を、本年度数回実施する。また、階層研究の理論的な検討をさらに進めるため、2019年の6月には、世界的に著名な階層研究者であるテルアビブ大学のYossi Shavit氏、本研究プロジェクトの海外共同研究者であるHyunjoon Park氏をお招きしての国際シンポジウムを行う。教育機会の不平等を主なテーマとするシンポジウムを開催することで、近年の家族の変化が不平等の形成にどのようにかかわっているのか、その理論的な示唆を得ることを大きな目的とする。国際シンポジウムに合わせて、全体会合を行い、各自の研究の進捗状況について共有し、研究を進める。また、本研究の代表者である竹ノ下は、海外共同研究者であるKwang-Yeong Shin氏の招待で、7月に韓国で開かれるKorea Inequality Research Networkのシンポジウムに出席し、研究報告を行う。そのことで、最近の韓国における不平等研究の動向を把握し、アジアを中心とする階層理論の再構成について、示唆を得る。さらに、韓国の階層研究者と、今後どのような研究交流が可能か、シンポジウム出席者と意見交換することを予定しており、国際的な階層研究の発展や日本と韓国との不平等研究の交流の進展を目指す。
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