研究課題/領域番号 |
18H00934
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研究機関 | 武蔵大学 |
研究代表者 |
イシ アンジェロ 武蔵大学, 社会学部, 教授 (20386353)
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研究分担者 |
白水 繁彦 駒澤大学, 付置研究所, 研究員 (80095942)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
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キーワード | ジャパン・ハウス / 日系ブラジル人 / 在日ブラジル人 / 新聞 / 文化外交 / 移民メディア / エスニック・メディア / 主流言語学習 |
研究実績の概要 |
まず、本研究の柱の一つであるブラジル居住の日系、中国系、および韓国系の移民が生産・利用するメディアの比較については、ブラジルでフィールドワークを実施し、台湾系による新聞1紙、韓国系新聞3紙での首脳者および編集者への半構造化インタビューを行なった。他方、最も伝統的な日系移民ラジオ局の創業者から、日系メディア界の現況のみならず展望に関する本音も聞き取った。次に、日本政府が立ち上げた各国でのジャパン・ハウス事業の事例研究については、ブラジルおよび英国においてジャパン・ハウス関係者への聞き取りを行なった(サンパウロおよびロンドンの両ジャパン・ハウスの館長を筆頭に、プログラミング・ディレクターなど、方針の立案や決定権を有する人々に聞き取りを行なった)。さらに、ポルトガルでは、在リスボン日本国大使館で日本の文化外交戦略について聞き取り調査を行なった。 他方、新たな課題として、新来外国人の主流言語等第2言語習得過程の複合的関係把握に関する調査も行なった。外国語学習のあり方を、言語学習者本人(例:在日外国人)、学習支援者(教員やボランティア指導者等)、コミュニティ(小状況:市や県、NGO/NPO、大状況:国や母国)との3者の複合的関係において把握しようと努めている。沖縄で半構造化インタビューを行い、次のような成果が得られた。①日本語学校留学生のなかには学業(日本語学習)を主たる目的とする者がいるいっぽう、借金返済等のため学業に集中できない者がいる。後者は日本語能力が低いままなのでより高度の人材としての就労が難しい。しかるに低廉労働力のままという悪循環に陥る可能性が高い。②沖縄のような地方の語学校を選ぶ理由の大きなもののひとつは、授業料が相対的に安いことがあげられる。いまひとつは語学校の側の積極的な募集活動である。広く外国にまで募生活動を展開している事が功を奏していると思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画以上に進展している調査項目は少なくとも2点挙げられる。まず、世界3ヵ国にあるジャパン・ハウスのうち、初年度ですでに2ヵ国のジャパン・ハウスでの、館長を含む主要関係者への聞き取り調査が遂行できた。また、移民メディア研究についても、サンパウロ市で複数の中国系・韓国系の新聞での聞き取り調査ができた。
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今後の研究の推進方策 |
移民と文化外交の研究については、在米のジャパン・ハウス関係者への聞き取りを試みる。すでに聞き取り調査が実施できたジャパンハウス2館や、新来外国人の言語習得過程の複合的把握については、引き続き、詳細なデータ収集に努める。各調査地での民間人(移民)による文化外交的実践にも着目する。 移民メディア研究については、昨年、ブラジルにおける主要な日系新聞が廃刊となったことに伴う、移民メディア界の現況、再編、展望について現地で調査を実施する。廃刊・現存するメディアの両者に聞き取りを行なう。他方、ブラジルの中国系メディアと韓国系メディアについては、中国系の新聞・雑誌の実態把握に力点を置く。
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備考 |
JICA横浜海外移住資料館 企画展示「日伯110年の絆-在日ブラジル人-在日30年をむかえた日系人の歴史と日常-」(在東京ブラジル総領事館共催、2018年6月16日~ 9月2日)の展示解説文を監修し、展示用の資料も提供した。
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