研究課題/領域番号 |
18H00938
|
研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
野崎 敏郎 佛教大学, 社会学部, 教授 (40253364)
|
研究分担者 |
田中 智子 京都大学, 教育学研究科, 准教授 (00379041)
恒木 健太郎 専修大学, 経済学部, 准教授 (30456769)
鈴木 宗徳 法政大学, 社会学部, 教授 (60329745)
三笘 利幸 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (60412615)
内藤 葉子 大阪府立大学, 人間社会システム科学研究科, 准教授 (70440998)
メンクハウス ハインリッヒ 明治大学, 法学部, 専任教授 (70515915)
大窪 善人 佛教大学, 公私立大学の部局等, 非常勤講師 (70815977)
橋本 直人 神戸大学, 人間発達環境学研究科, 准教授 (80324896)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2021-03-31
|
キーワード | 日独学術交流史 / 初期日本社会学史 / 初期帝国大学 / お雇い外国人 / カール・ラートゲン / マックス・ヴェーバー / マリアンネ・ヴェーバー |
研究実績の概要 |
日独社会思想史・政治史、初期帝国大学、ジェンダー論、近代福祉政策史等にかんする図書の購入と読解を進めた。とくにドイツ第二帝政期、日本の明治・大正期における社会思想と大学再編の動向、その時期におけるラートゲン、マックス・ヴェーバー、マリアンネ・ヴェーバーの活動の位置づけについて、考証をおこなった。これによって、第一次世界大戦後のドイツ国民経済の危機が、国民精神崩壊の危機を伴っており、それが彼らの危機意識と結びついていることが判明した。また、ドイツにおける女性運動の実相の一端も判明した。 8月期と2・3月期に、延べ3名をドイツに派遣し、史料調査を進めた。訪問先は、バイエルン州立図書館手稿室、プロイセン文化財枢密公文書館(ベルリン)、ハンブルク州立公文書館、マールブルク州立公文書館、ハイデルベルク大学公文書館、カールスルーエ総合公文書館、ライプツィヒ民俗資料館、各地の図書館である。これによって、第二帝政期ドイツの社会思想の展開と大学再編の方向にかんする新資料が得られた。とくに、第一次世界大戦後のラートゲンの活動と、マリアンネの議会活動にかんして、新たな知見が得られた。 ドイツ渡航のさい、ラートゲンの親戚筋に当たるドイツ人に面会し、遺稿にかんする情報を入手した。またドイツ在住の研究協力者(近代日本研究者)と関係研究者(ヴェーバー研究者)にも面会し、研究交流をおこなった。 国内調査は、日帰りで3回実施し、東京大学文書館において、初期帝国大学にかんする史料と、ラートゲンの滞日時の事績にかんする資料を調査した。これに依拠して、初期帝大の存立基盤の脆弱性、とくにその財政上の問題について考証をおこなった。 9月と3月に研究会を開催し、ヴェーバーの社会理論、ラートゲンの滞日時の事績とその政治的志向性、初期帝国大学にかんする先行研究の意義と限界、ドイツ語手稿判読の実際などについて検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
海外調査、国内調査が、おおむね計画通りに遂行できた。マリアンネ・ヴェーバーの夫宛書簡(バイエルン州立図書館手稿室所蔵)には、当時の女性議員の活動の実相が記されている。ハンブルク市の学術機関担当官の報告書(ハンブルク州立公文書館所蔵)には、招聘すべき経済学者として、ユダヤ系のエドガル・ヤッフェが挙げられており、第二帝政期において、ユダヤ系研究者を受け入れようとする動きがみられたことが判明した。また、東京大学文書館所蔵資料によって、初期帝国大学の実相に迫りつつある。他の諸館においても、本研究課題で扱っている社会科学者や文部官僚の動静にかんする新事実を見いだすことができた。 2回実施した研究会によって、当該研究課題の具体的な内容の精査をおこなうことができ、次年度に向けた課題も明確になった。 不測の事態として、ラートゲンの滞日書簡(1882~1890年)の現物の所在がわからなくなっていることが判明した。これは転居時に生じた事態とのことで、保管者であるラートゲンの親族者に探索を依頼したが、現時点で見つかっていない。しかしその一方で、ライプツィヒ民俗資料館において、1986年頃に、この書簡が複写されていたことがわかり、その複写物を閲覧することができた。かなり鮮明なコピーであることから、この複写物によって判読と研究が可能であると判断し、当該館に、この複写物のスキャンを依頼した。 以上のように、未公刊史料の判読と考証、公刊資料の読解と研究は、それぞれ進みつつある。反面、判明しつつある新事実を、日独学術交流史や近代大学史に嵌めこみながら、ひとつの歴史像を構築するには至っていない。
|
今後の研究の推進方策 |
ラートゲン書簡(の複写物)の入手が遅れているため、その考証作業ができていない。近日中に所蔵機関からスキャン・データが送付される見込みであり、入手後、ただちに研究に取りかかる。 次年度も延べ3名をドイツに派遣して、未公刊史料と公刊資料の研究に当たるが、並行して、日独学術交流史や近代大学史を鳥瞰する作業も進める。とくに、初期日本社会学史の発展にとって、ラートゲン他の来日ドイツ人の活動と、留学した日本人研究者たちの活動がどのような意義を有していたのかを考察する。 2020年度に予定しているシンポジウムのテーマと主内容を固め、その準備を進める。
|