研究課題
本課題は、内閣府世論調査の測定誤差を明らかにすることで、より正確に社会情勢および社会意識を描写できるような社会調査方法を提案する。内閣府世論調査は社会学のみならず社会科学全般に強い影響を与えているが、その結果には現実の社会をどこまで反映できているか疑問を抱くようなものが少なくない。本課題では、こうした調査結果と生活実感との乖離が非標本誤差の大きさによると考え、心理統計学の発想を導入することによって同調査の測定誤差を抑制し、より正確な社会調査を提案していくことを目標とする。2020年度は、18年度および19年度に行われた実験的ウェブ調査の知見を踏まえた地域調査の実施とその結果の分析を行った。これまでに得られた主たる知見は以下のとおりである。①内閣府世論調査は日本社会の高齢化を上回るペースで高齢者からの回答が増加している。これによりいくつかの重要な項目、例えば外国への好感度などでバイアスが生じている。②政策への満足などで複数回答(MA)が多用されているが、順序効果が顕著に観察される、項目ごとに評価の基準が大きく異なっているなど、測定の正確さが疑われる傾向が顕著に観察される。③「わからない」「どちらともいえない」などの中間回答が抑制されるような方策が講じられており、そのために賛否両極に位置する回答者の態度が誇張されている。なお、訪問面接調査を採用していることで「社会的望ましさのバイアス」(social desirability bias)の発生も予想されるが、これについては本課題では検証には至らなかった。こうしたバイアスを抑制するためには、回答に伴う認知的負荷の軽減(回答者が無理なく自然に答えられるようにすること)が有効と期待される。
令和2年度が最終年度であるため、記入しない。
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社会学評論
巻: 71(1) ページ: 65-83