研究課題/領域番号 |
18H00949
|
研究機関 | 岡山県立大学 |
研究代表者 |
竹本 与志人 岡山県立大学, 保健福祉学部, 教授 (70510080)
|
研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | 認知症 / 家族介護者 / 認知症専門医療機関 / 受診 / 鑑別診断 |
研究実績の概要 |
2018年度の研究目的は、社会福祉の視点からの診断・治療が円滑になるための実践モデルの開発に有用な資料を得るため、当事者や家族介護者を対象に医療機関の診療体制や連携担当者の実践すべき援助業務を探索することであった。本年度は3つの研究を実施した。第一に、先行研究を基に文献的検討を行い、認知症者とその家族介護者が医療機関に求めている機能や役割を分析した。その結果、『認知症者とその家族が望む医療機関の物的環境』『認知症者とその家族が望む医療機関の人的環境』『認知症者とその家族が望む連携』『認知症医療の現状と課題』に収斂することができた。第二に、認知症者の家族介護者を対象にインタビュー調査を実施した。認知症の人と家族の会本部等を訪問して助言等を得るとともに、大阪府(9名)ならびに岡山県(6名)において半構造化面接またはフォーカスグループインタビューを実施した。その結果、医療機関の受診前、受診時、受診後のいずれの時期においても診断前の治療に関する不安や診断後の心理社会的問題等に対する福祉専門職の介入はほとんどなく、療養生活の支援のための総合相談機能が医療機関に求められることが確認できた。第三に、鑑別診断時に焦点を当て、認知症専門医療機関における当事者とその家族への対応内容を確認するため、熊本県、広島県、高知県の3県を対象にアンケート調査を実施した。居宅介護支援事業所の介護支援専門員の協力により188名分の調査票が配付され、111名分の調査票を回収することができた。結果、受診前の対応では医師以外の職員によって受診前の経緯について聴き取りが行われた事例は約半数であり、受診時および受診後の対応については「病名」や「薬の飲み方」、「薬の副作用」についての説明が行われている一方、「医療費」「医療費の軽減方法」「介護保険」等の療養生活に係る助言等が行われている頻度が少なかったことが確認された。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画ではインタビュー調査を実施することが中心であったが、①文献的検討、②質的研究、③量的研究の3方向から研究が実施でき、次年度以降の研究につながる有用な資料が得られたことから、当初の計画以上に進展したものと判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
本研究の目的は、認知症が疑われる高齢者が発症初期段階で早期に受診・受療が可能となることをねらいに、認知症専門医療機関の診療体制と連携担当者による受診・受療援助の実態を解明し、社会福祉の視点から診断・治療が円滑になるための実践モデル(ソーシャルワーク実践モデル)を開発することである。今年度の研究では、認知症者や家族介護者側の視点から研究を行った。今後は認知症専門医療機関との連携を行う地域包括支援センターの視点からの研究(2019年度)、さらには認知症専門医療機関の診療体制ならびに連携担当者等の実践状況の確認(2020-2021年)を行うことが必要である。これら一連の研究の実施により、認知症専門医療機関の診療体制と連携担当者による受診・受療援助の実態が解明でき、さらには当初の目的である社会福祉の視点からの診断・治療が円滑になるための実践モデル(ソーシャルワーク実践モデル)を開発(2022年度)できるものと考える。
|