研究課題/領域番号 |
18H00956
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
長瀬 正子 佛教大学, 社会福祉学部, 准教授 (20442296)
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研究分担者 |
永野 咲 武蔵野大学, 人間科学部, 講師 (10788326)
松本 伊智朗 北海道大学, 教育学研究院, 教授 (20199863)
谷口 由希子 名古屋市立大学, 大学院人間文化研究科, 准教授 (80449470)
伊部 恭子 佛教大学, 社会福祉学部, 教授 (90340471)
新藤 こずえ 上智大学, 総合人間科学部, 准教授 (90433391)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | 社会的養護 / 退所者 / 健康リスク / 家族形成 / 再困難層 |
研究実績の概要 |
2020年度は、本研究の目的である児童養護施設等で育った若者の健康リスクと家族形成のプロセスについて、自立援助ホーム退居者に焦点をあてた調査報告書を発刊することができた。具体的には、2018年度に全国自立援助ホーム協議会調査研究委員会と本科研研究班が合同で実施した「自立援助ホーム退居者の生活状況に関する調査(調査実施は、「子どもの貧困に関する総合的研究(科研基盤A16H02047 研究代表者:松本伊智朗)」により助成)」である。2018年度時点で過去5年間に退居した若者について、年齢や退居理由、現在の住居の状況や進路、福祉ニーズや心身の状況、家族形成の状況を明らかにすることができた。報告書では、これまでの自立援助ホームの基本的な役割ではサポートしきれないと支援者が考える層が浮き彫りとなった。全体のうち18歳以下の退居者が6割を占めること、退居の理由が「自立」をしたとは考えにくい状況が3割弱あった。困難事例は、これらの結果を鑑みても、退居者全体のなかでも困難が集積した層だと考えられる。また、入居前から退居後までの時間軸、それぞれの困難との因果関係まで分析することはできなかった。 また、2020年度は、上記報告書の発刊をすすめるとともに、本調査で実施予定の2種類の調査(【調査2】養育者・支援者への面接調査、【調査3】妊娠・出産・子育てを経験した退所者への面接調査)の調査設計およびインタビューガイドの再検討を行ってきた。すでに述べたように、18歳以下で退居することになった若者のおかれた状況の困難性が高いことが明らかとなったことから、2018年度調査における18歳以下の困難事例に焦点をあて、その実態を詳細に把握できるようなインタビューを実施することとした。本来であれば、今年度中にインタビューに着手するところであるが、コロナ禍でかなわないため、次年度に持ち越しとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記報告書の発刊をすすめるとともに、本調査で実施予定の2種類の調査(【調査2】養育者・支援者への面接調査、【調査3】妊娠・出産・子育てを経験した退所者への面接調査)の調査設計およびインタビューガイドの再検討に時間を要したためである。調査報告書を執筆するなかで、18歳以下で退居することになった若者のおかれた状況の困難性が高いことが明らかとなった。よって、2018年度調査において18歳以下の困難事例に焦点をあて、困難な状況におかれる若者の実態を詳細に把握できるようなインタビューを実施することとした。しかし、コロナ禍でインタビュー調査の実施が難しいため、次年度に持ち越しとなった。
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今後の研究の推進方策 |
本年度は、昨年度に引き続き、社会的養護における養育者・支援者への面接調査を行う。困難な状況を生きている当事者の全体像を明らかにするとともに、養育者・支援者の支援の実際、その困難のありようを明らかにしていく。 その際、全国自立援助ホーム協議会調査研究委員会と本科研研究班が2018年度に合同で実施した自立援助ホーム退居者の生活状況に関する調査(調査実施は、「子どもの貧困に関する総合的研究(科研基盤A16H02047研究代表者:松本伊智朗)」により助成)にて収集した困難事例についての知見を参考にしていく。質問紙調査では得ることができなかった、社会的養護の退所者をめぐる実態を明らかにしていく。心身の健康を害した(死亡したケースを含む)退所者の例を中心に、健康リスクに直面した退所者の状況、支援者からの支援の実際、今後望まれる支援と制度のあり方について、施設等における養育者・支援者への半構造化面接を行い、把握する。面接対象者は、社会的養護施設の職員(元職員を含む)等、支援関係者で、すでに同意を得ている。これらの調査においては、困難事例の分析を中心的に行ってきた伊部・谷口・長瀬を中心に行う。 同時に、上記面接調査をお引き受けいただいた養育者・支援者に妊娠・出産・子育てを経験した施設等退所者を紹介していただく。退所者本人に対する半構造化された個別面接調査を行い、妊娠・出産・子育てに関わる困難と対処に焦点を当て、退所後の生活と支援ニーズについて把握を行う。調査協力者は、施設等で育ち、妊娠・出産経験のある人(パートナーを含む)で、本人の同意を得て実施する。これらの調査においては、自立援助ホーム退居者の生活状況に関する調査の全体状況を把握してきた新藤・永野を中心に行う。 合わせて、海外渡航が可能となって以降の海外調査に向けても、情報収集を続けていく。
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