研究課題/領域番号 |
18H00957
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
櫻井 純理 立命館大学, 産業社会学部, 教授 (10469067)
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研究分担者 |
神崎 淳子 金沢星稜大学, 経済学部, 講師 (00569353)
長松 奈美江 関西学院大学, 社会学部, 准教授 (30506316)
阿部 真大 甲南大学, 文学部, 教授 (60550259)
仲 修平 東京大学, 社会科学研究所, 助教 (60732401)
筒井 美紀 法政大学, キャリアデザイン学部, 教授 (70388023)
嶋内 健 立命館大学, 産業社会学部, 授業担当講師 (70748590)
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研究期間 (年度) |
2018-04-01 – 2022-03-31
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キーワード | アクティベーション / 地方自治体 / 生活困窮者 / 社会的排除 / 欧州 / 就労支援 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、日本社会に広がる経済的困窮と社会的排除の問題解決に資する政策のあり方を探ることである。特に、1.政策の垂直・水平的なガバナンス構造の変化に着目し、2.地方自治体による政策を事例とした比較分析と、3.欧州における理論的・経験的研究成果に立脚した国際比較分析を進めていくことを目指している。 2019年度は、(1)国内の地方自治体政策の調査・分析と、(2)欧州研究者を招聘した共同調査・研究会の実施を主な研究内容として予定していた。(1)については、2月19~21日にかけて、石川県加賀市のワークチャレンジ事業に関する聴き取り調査を実施した。地方自治体内部のガバナンス構造、自治体と委託事業者との連携、都市部以外における産業振興と就労支援事業推進の課題など、注目すべき論点を抽出し、分析を進めることができた(成果は2020年度の学会で報告)。また、下記の通り、大阪府高槻市の調査も実施した。 (2)の面では、ウィーン大学のユーリ・カゼポフ教授を招聘した(2020年2月3~16日)。2月5日には、大阪府高槻市の生活困窮者自立支援事業の実施状況について、共同で調査を実施。2月14日の研究会では、この調査結果について議論するとともに、カゼポフ氏に最近の研究成果を報告していただいた(テーマはYouth labour market integration in European regions)。労働市場への若者の統合について、地方ごとの状況を比較検討する具体的な手法について学ぶことができた。2020年3月には、欧州から別の研究者を招聘し、研究会を実施する計画だったが、コロナ禍の影響で中止となった(下記の通り)。 2019年度に実施した研究会は9月21日(第5回)、12月21日(第6回)、2020年2月14日(第7回)、2月20日(第8回)の4回である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2019年度はデンマークとノルウェーの研究者を3名招聘し、共同研究会やシンポジウムを実施することが決定し、具体的な手続きを進めていた(※)。しかしながら、対象国と日本でのコロナ禍の急速な深刻化により、直前で中止を決定せざるをえなくなった。 ※2020年3月7日、「欧米諸国のアクティベーション政策はどう変わったか―日本の政策への示唆」(The development of activation policy in Europe and the U.S.: Implications for understanding the Japanese contexts.)というテーマで、シンポジウムの開催を予定・案内していた。招聘を予定していたのは、Ivar Lodemel(オスロ・メトロポリタン大学社会科学部教授) Bjorn Hvinden(オスロ・メトロポリタン大学NOVA〔社会研究センター〕教授・上級研究員、Flemming Larsen(オールボー大学政治学部教授)の3名である。 その結果、2019年度において、2018年度予算からの繰越金は欧州研究者の招聘準備や先行研究の入手と分析等に活用したが、当初予定していた研究のすべてを遂行することはできなくなり、2019年度予算の一部を2020年度に繰り越さざるをえなくなった。
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今後の研究の推進方策 |
国内の事例分析に関しては、生活困窮者自立支援制度の諸事業を対象に、質的調査を積み重ねて事例数を増やし、自治体間の比較分析の方法論を提起していく。これに加え、コロナ禍の長期化という想定外の事態をふまえ、同制度の相談支援を活用した市民に対する聴き取り調査に着手した。利用者側の視点に立って、労働と福祉を架橋する政策において、行政サービスには何が求められているのかを明らかにしていく。 他方、北欧(デンマークとノルウェー)と日本の政策との比較分析に関しては、現地での聴き取り調査の実施と、2019年度に中止した日本への研究者招聘を実現したい。残念ながら、現時点でも感染症問題の解決時期が見通せないことから、研究計画の一部変更や繰越も視野に入れる。より具体的には、1.ウェブを活用した研究会開催への切り替え、2.より安全な地域での調査実施、3.補助事業の繰越といった対応策が考えられる。今後も状況を見ながら、現地調査や日本への招聘の可能性をできる限り探っていきたい。
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